女性への求人は非正規ばかり…、短期契約で雇い止めに
こうした女性たちの苦境への対策について、2020年11月にまとめられた厚労省の雇用政策研究会報告書(概要版)の「アフターコロナを見据えた政策の具体的な方向性」は、次のように述べている。
「マザーズハローワーク等における子育て中の女性等を対象とした担当者制による職業相談・職業紹介等の支援に加え、子育て中の女性等が仕事と家庭の両立を図りやすいテレワークが可能な求人といったように、女性求職者の様々なニーズを踏まえた求人開拓を行う等、早期再就職を支援することで、不本意な非労働力人口化を防止」
一見、悪い施策ではない。だが、コロナ前から非正規比率が過半数を占めてきた女性の労働市場では、このような「求人開拓」や「早期再就職支援」が実行されたとしても、チヅルの例のように不安定雇用から不安定雇用への移動の連鎖に終わる確率は低くない。
あるハローワークの職員は次のように嘆く。
「現場では正社員就職の目標値が設けられているが、女性の過半数が非正規の労働市場で、とりわけ女性の正社員化はハードルが高い。数値を上げるためか、『週20時間を超えた仕事に就けば正規就職』とか『ハローワークには複数の部署があるが、たとえばこのうち4つの部署に重複登録した求職者が1つの企業に正規就職したら4人分』とかいったカウント方法をとってもいい、と現場では1言われている」
「女性への求人は非正規しかない場合がほとんど。就職の達成率を上げようと、苦労して会社に押し込んでも短期契約によって都合よく雇い止めされ、またハローワークに戻ってきてしまう」
短期雇用を渡り歩く「回転寿司型就労」の陰にDV
特に目立つのは、パワハラによって退職に追い込まれる例だという。パワハラの被害者は、男性も多い。だが、とりわけ女性は、夫のDVや上司のセクハラ、親による女の子を軽視する教育、などの暴力に慣れてしまっている。そのためパワハラされても自分が悪かったから、と思い込み、対抗できない女性が多い。その結果、黙って退職してはハローワークに舞い戻ることを繰り返すという。
「女性たちが言うんです。『私たちって回転寿司みたい。ベルトの上を回り続けているだけで一向にまともな仕事にたどりつけない』って」。ある相談員は苦く笑う。
首都圏に住む40代のサトコは、そんな1人だ。30代の専業主婦だった11年前、夫から離婚を求められ、パートや生活保護を支えに2人の子どもを育ててきた。2019年冬、知人の紹介で大手生命保険会社の営業として正社員就職した。仕事に慣れない3かカ月間は税込みで16万円保障すると言われ、生活保護を抜け出すことができた。その3かカ月後、コロナ禍が始まった。