日本にとって最も身近な中華圏である台湾
日本人にとって台湾ほど身近な中華圏はないでしょう。過去数年間、この島の将来と運命を左右する国際環境が大きく変わろうとしています。明治維新以降、日本の敵対勢力がこの島を実効支配したことはありません。台湾の平和と安定は、遠く中東湾岸地域までのシーレーンの安全を含む、日本の安全保障にとって不可欠な国際環境に寄与してきました。こうした環境は変わるのか、変わるとすれば、それはいつなのでしょうか。
悪魔のささやき
①事実上「独立」している台湾は民主化に成功し、経済的繁栄を享受しているものの、中国との関係で主権国家として「独立」を宣言することはできず、その国際的立場は当面不安定であり続ける
②経済的にも台湾の対中国経済依存は圧倒的であり、台湾の経済や技術水準が現在如何に高くとも、中長期的には人口14億人の巨大中国市場なしに台湾経済が存続することは困難である
③軍事的には、最近の人民解放軍の能力増強により、アメリカなどの諸外国が軍事介入しない限り、中国は単独で台湾を軍事侵攻し制圧できる能力を既に保持している
④外交的には、アメリカなどが台湾との関係強化を模索しているが、台湾と外交関係を結ぶ国の数は近年漸減しており、台湾の国際的孤立が改善する見込みは当面ない
天使のさえずり
①現指導部は台湾「独立」を志向しておらず、中国が近い将来、台湾に「軍事侵攻」する口実は乏しい
②台湾は半導体などハイテク分野で技術力を高めており、台湾経済が近い将来失速する可能性はない
③外交関係は縮小するも、アメリカの台湾支援が強化されるなど、台湾の潜在的支援国は増えつつある
④台湾内、特に若年層では「台湾人」アイデンティティが拡大しており、中国への帰属感は薄れつつある