ロシアのウクライナ侵攻はいつ終わるのか。元外交官の宮家邦彦さんは「ロシア民族主義者の一部はウクライナを『ロシアと一体』でありながら『弟分』と見る傾向がある。戦争終結前にプーチンが失脚する可能性は低く、仮に失脚した場合でも、ポスト・プーチンがより国粋的、民族主義的なリーダーになるリスクもある」という――。
※本稿は、宮家邦彦『世界情勢地図を読む』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
ヨーロッパの輪に入れてもらえない悲しい国
そもそも、ロシアというのはどういう国なのでしょう。
ロシアはとても悲しい国です。自分たちはヨーロッパの一部だと自負していますが、西欧諸国はもちろん、東欧諸国ですら、心の底ではそれを認めてくれません。歴史的には過去数世紀の間に帝国主義的拡大を続けたロシアも、1991年のソ連崩壊により大きな壁に直面しました。
更に、2022年にはウクライナ戦争というプーチン大統領の戦略的判断ミスにより、ロシア国家はその存続に関わる大きな壁に直面しています。
「緩衝地帯」と「不凍港」を求め続ける国
現在のロシアの原型は15世紀のモスクワ大公国でした。ロシアの外敵を防ぐ山脈は、アジアとの境界にあるウラル、中東方面のカルパチア、南アジア方面のコーカサス(カフカス)でいずれも遠く、モスクワの周辺は山や海のない平坦な地形です。モスクワは強力な外敵にあまりにも脆弱でした。
こうしたロシアの弱さはロシア人の安全保障観を独特なものにしていきます。
13世紀のモンゴル来襲はロシアの危機感を決定付けました。陸続きの国境は脆弱で、100%の安全を確保するためには、敵との間の十分な「緩衝地帯」と、いざという時に海へ逃げられる「不凍港」が必要ということでしょう。その後、モスクワはこの理想を貪欲に実現していきます。