台湾に民主主義を定着させたのは中国だった

①中国は台湾を実効支配したことがない

正確には、「中華人民共和国は」と言うべきでしょう。漢族が台湾に移住し始めた17世紀、台湾はオランダとスペインの植民地でした。1662年に鄭成功がオランダを追放して台湾に「東寧王国」を建てましたが、その後、清朝が同王国を破り、台湾を併合します。1895年に日清戦争後の下関条約で台湾は清朝から日本に割譲され、1945年以降は「中華民国」が台湾を実効支配しています。

②台湾の民主主義

皮肉なことに、台湾に民主主義を定着させたのは中国でした。1995年から1996年にかけて、中国は台湾海峡周辺海域で一連のミサイル発射実験を行いました。当時は台湾で初の直接民選総統選挙が行われる直前で、この軍事的危機もあり、初の民選総統には李登輝が当選しました。

こうした中国側の強硬措置は逆効果となり、台湾独立志向の強い李登輝が当選したことは皮肉としか言いようがありませんが、同様のことは2020年にも起きています。香港当局がデモを厳しく取り締まった結果、当時劣勢だった民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が再選されたのです。

94%の人が自分たちは「台湾人」と考えている

③ハイテクで生きる台湾

台湾では1987年に台湾元高・ドル安が進み、労働集約型製品輸出が落ち込むなど「産業の空洞化」が危惧されました。これに対し、台湾は「産業の高度化」を目指し、ハイテク産業育成を積極的に進めました。今や台湾には半導体を始めとする世界有数のハイテク企業が進出しています。

④切り崩される台湾外交

2022年末の段階で「中華民国」と外交関係を持つ国連加盟国は13カ国しかありません。2016年に民進党の蔡英文政権成立後、中国は中南米諸国に対する外交的圧力を強め、サントメ・プリンシペ、パナマ、ブルキナファソと相次いで国交を樹立、「中華民国」との断交を迫る外交を進めてきました。その結果、台湾は2016年にはサントメ・プリンシペ、2017年にはパナマ、2018年にはエルサルバドル、ドミニカ、ブルキナファソ、2019年にはソロモン諸島、キリバス、2021年にはニカラグアと断交しています。

⑤台湾人の意識に変化は

台湾・政治大学選挙研究センターの世論調査によれば、自らを「台湾人」「中国人」「両方」と考える台湾の人々の割合が1992年からの30年で激変し、「台湾人」が17.6%から60.8%に、「中国人」が25.5%から2.7%に、「両方」が46.4%から32.9%になったそうです。つまり、今や台湾民衆の94%が「台湾人」アイデンティティを持っているのです。これでは中国が台湾を「平和的に統一」することは難しいでしょう。