関東大震災で10万人が犠牲になったワケ

日本の大規模火災は山林からというよりも、地震や失火などで都市部に発生している。

新潟県糸魚川市で2016年12月に発生した糸魚川市駅北大火は、飲食店から出火し、鎮火まで約30時間かかった。南からの強風にあおられて、147棟が焼失したとされ、大惨事となった。

「日本では山火事というよりも、地震の後が心配になる」と話すのは桑名教授で、100年前の関東大震災や、1995年1月に起きた阪神淡路大震災の後の事例を挙げる。これらの地震では「いろいろなところで火災が起こり、あっという間に広がった」という。

1923年9月1日、関東大震災が起きた。

発生したのが昼どきで、火を使って調理している家庭が少なくなかったとされ、木造の家屋が多かったことも被害を大きくした。桑名教授は「火災旋風で被害が大きくなった。避難がうまくできなかった」と指摘する。犠牲者数ははっきりしていないが、10万人を超えるとされ、その9割くらいが火災によるものとされる。

関東大震災の犠牲者
関東大震災の犠牲者(写真=Robert L. Capp/PD-Japan-oldphoto/Wikimedia Commons

現在の東京・両国駅あたりの本所被服廠跡では、避難していた人たちが火災旋風に巻き込まれ、「そこだけで3万8000人くらいが亡くなられた」(桑名教授)。大規模な火災が発生すると、うまく逃げられるかが生死を分けるという。マウイ島の火災でも「逃げるところがなくなり、被害が大きくなった」と桑名教授はみている。

関東大震災の当時と、現在との大きな違いは、当時の調理場がかまどなどだったのに対して、現在は自動消火機能など安全に設計されているガスコンロが多い。出火の仕方がかなり違うと、桑名教授はみている。