犠牲者100人超ハワイの山火事は「対岸の火事」ではない
今年8月にハワイのマウイ島で大規模な山火事で多くの犠牲者が出た。世界的なリゾート地の変わり果てた姿を伝える映像が、被害の深刻さを物語っている。こうした大規模な火事が日本でも起こり、大惨事となる懸念はないのだろうか。専門家に話を聞いた。
米国ハワイ州のマウイ島で8月8日に山火事が起こり、短時間に広範囲を焼き尽くし、多くの犠牲者が出た。原因や被害状況はまだ調査中だが、犠牲者は100人を超え、行方不明者が数百人規模とも1000人前後とも伝えられている。山火事は一気に広がって大規模となり、逃げ遅れた人が多数いたようだ。島西部で海辺の町、ラハイナなどに大きな被害が出ている。
火事の原因はわかっていないが、現地では山火事の発生前にハリケーンが通過しており、強風で火があおられたのではないかとみられている。さらに異常な高温で、降水量も少なくなっており、乾燥した状態だったことで、短時間に大規模な火事となってしまったとの見方も出ている。
強風で倒れた電柱の送電線の火花で火事が起きたとして、現地当局が電力会社を相手取り提訴したと報道されている。現地当局は電力会社に対し、火事が起きる可能性があると警告し、送電の停止を求めていたという。
「火災は風次第のところがあり、大規模な火災では避難ができるかどうかが大きい」と指摘するのは、桑名一徳・東京理科大学教授(国際火災学)。マウイ島の火災は「山のほうで始まり、街に到達するころには大きな火災の“前線”がつくられていたのではないか」と話す。
風にあおられて火が巻き上がり、竜巻のように激しく燃え上がる「火災旋風」の起きることがあるほか、飛び火で思ったよりも延焼することもあり得るという。
桑名教授が海外の山火事を調べると、樹木の種類で燃えやすいものがあり、植生で火が広がりやすいことがあるという。「ラハイナの周りは木が茂っているというより、牧草地のような広がりと思う。一気に燃え広がったのではないか」と話す。そこにいた人たちは火に囲まれて逃げ場を失い、被害が大きくなったのではないかとみている。