とはいえ、ウロジャイノエ村はこの地域のロシア軍の補給網で重要な位置を占めていたため、「ここを失うことで、ロシア軍はより広い範囲で防御に支障をきたすだろう」と、ゼレンスキーの元報道官ユリヤ・メンデルは、複数の軍事ブロガーを引用して、X(旧ツイッター)で述べている。
ニューヨーク・タイムズが先週伝えた予測によれば、ロシア軍はこの地域から撤退すれば、さらに南の第2防御線に当たるスタロムリニフカ村近辺に移動を余儀なくされる。そうなれば、ウクライナ軍はアゾフ海沿岸の都市ベルジャンシクとマリウポリまで約80キロまで迫ることになり、さらに南のアゾフ海に達することも可能になる。
その場合、ウロジャイノエ村の奪還は「ロシア軍の防御線を次々に打ち破る突破口となる」と、ファソラは言う。「ロシアの最前線と防御陣地の弱点を探るウクライナ軍の地ならし作戦が成功し、本格的に攻勢をかけるべき地点が分かった、ということだ」
「ウクライナ軍はロシア軍の防御の弱点を突いて、さらに南のマリウポリへと進み、ロシア軍がこの1年間に占領したウクライナ南東部を真っ二つに分断しようとするだろう」
マリウポリを奪還できれば、さらに南の内海である黒海に臨む拠点確保の可能性もみえてくる。だがたとえマリウポリに到達できないとしても、ウロジャイノエ奪還により、ウクライナ軍が西側の供与した弾薬と兵器で「ロシア軍の陣地のより奥深くまで攻撃できるようになることは確かだ」と、ファソラは言う。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら