仕事の生産性を高めるにはどうすればいいのか。東京大学特任研究員の安川新一郎さんは「最新の研究では、睡眠時間の不足と生産性の低さに相関があると指摘されている。感情を整理する『レム睡眠』を確保するためにも、7~8時間の睡眠時間の確保することが大切だ」という――。

※本稿は、安川新一郎『ブレイン・ワークアウト』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

ベッドサイドテーブルに目覚まし時計や本が置いてある寝室
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日本人の低い生産性の元凶、短時間睡眠とその礼賛

日中に仕事や勉強をしたり、運動をした後は、誰しも休息と睡眠が必要です。しかし、効率化と競争のプレッシャーに晒され続けている我々は、それらを軽視しがちです。私は、日本の失われた30年の元凶は「昭和の高度成長時代の働き方ノスタルジー」にあると思っています。

高度成長期は、少しでも長く働いたほうが個人も会社の業績もあがりました。そして新卒大学生を大量一括採用し、長時間残業で働かせ、「男性主体、女性はサポート」と男女の役割を明確に分け、体力勝負の男性中心の組織と昇進システムを作り上げました。

高度経済成長期の「出世するサラリーマン」

バブル期やITバブル期などの高度成長企業の職場を経験した私には、その時の様子がありありとイメージできます。日本経済や業界がうねりと熱量を持って急成長している時は、少しでも長い時間働けば、個人にも組織にも必ず結果が付いてきます。

職場全体にある種の高揚感があるなかで仕事をしているので、気づいたら終電の時間になっていたり、深夜遅い時間からでも皆で飲みに行ってしまったりしました。経済全体も業界も会社も激しく変化しているので、早起きして誰よりも早く出社した人間が、職場の情報をいち早くつかみ、上司の意向を理解して先に仕事に取り掛かれ、結果として高い評価を得ます。

高度成長期とは、空からハラリハラリと紙幣が永遠に落ちてくるイメージです。誰もが同じ方向を向いて、寝る時間を惜しんで少しでもそれらを拾おうとします。遅くまで残業をし、終電で帰って家では寝るだけ、また誰よりも早起きして出社する、一生懸命上司のいう通り働いていると、給与は保証され、人生の帳尻は最後には合う(と信じている)――それが、高度経済成長期において出世するサラリーマンの働き方と生き方でした。