「僕の仕事は、まず累損を解消すること。そのためには利益を出すことが必要です。僕はそこに徹底的に注力したから、売り上げはそんなに増えていない。なのになぜ、利益が出たかというと、コストを半分にすることに力を注いだから。他社の地震計が200万円。うちは180万円ぐらいだから勝てる、などと考えていたらとんでもない。他社だって頑張っている。他社が200万だったら、当社は100万。半分にすれば絶対勝つ」


QCAST受信装置(写真上)はその場の推定震度と“本揺れ”までの猶予時間を表示。津波観測装置(左下)は波高20mに対応し改造。発送先の自治体名が記してある。計測震度計と表示板、センサーの3点セット(右下2枚)。

そんな「ハーフコスト活動」を主導した新社長は当然、「電話機1台に5000円札を貼り付けて売るような」(上澤氏)固定電話事業を切り捨てた。

「後生大事に電話をつくり続ける限り、この会社は破産する以外にありません。やめることが大切。いわゆる“選択と集中”です。儲からない、古いものは捨てればいい。どんどん新しいものをつくり出す技術は、日本はほんとに凄いんです。明星は世界一の商品を目指せばいい」

上澤氏は、こうした自動車部品流のコスト意識をどう社員に植え付けたのか。

品質管理とコストカットのためには、前述のように現場で小さなムダを発見し、その“上流”にさかのぼって原因を探り出す作業を全社的に行う必要がある。そのための手法が“なぜなぜ”である。

例えば、こんな具合だ。同社の守衛は、前夜に徹夜した社員名をメモしている。上澤氏は朝、そのメモを見て当人に徹夜の理由を聞き、8時の朝会で、本部長に「なぜ徹夜させたのか」と問い質す。「生産が遅れたので、最後の検査の立ち合いの準備で徹夜になった」。なぜ遅れたのか?「部品が入るのが遅かった」。なぜ遅かったのか?「A・B・Cの3案あって、A・B案の部品は全部そろえたが、結局C案になった。そのC案の部品の一部が入ってこなかった」。ではなぜ……と順々に詰めていき、技術担当が営業に同行せず、A案を強く推せなかった、という“源流”にいきつく。案が1つで済めば、設計も、試作も、計画実験もすべて1つで済む。コストは3分の1に減る。そこで、営業部門に技術担当者を常駐させることにした。

「とにかく、上流に攻め上がるんです」

にこやかな表情で、噛んで含めるように話す上澤氏の説明は簡明率直だ。