「通路に生産進捗管理板を立て、各所の進行状況によって青、黄、赤の3色を表示する。不良品は恒久対策ができるまで通路の一番前に出しています」(上澤氏)

明星電気相談役
上澤信彦氏

加えて、社内報の編集者をすべて女性に代え、内容も一新。2面に全社員の顔写真と星座や性格、趣味を順番に出している。食堂の壁には、出身地と共通の趣味ごとに社員の名札がまとめて並べてある。「社長・役員や社員、派遣社員、掃除のお姉さん、食堂の人たちの名もすべて入っている」(上澤氏)という。

こうした努力の末に生まれたのが、同社が「お祭り方式」と呼ぶ手法だ。「お祭り広場」と名付けた工場内の一角に、様々な特技を持つ社員たちがお神輿よろしく集まり、短くて数日という超スピードで寄ってたかって製品を仕上げてゆく。セクショナリズム克服の証左といえよう。

面白いことにここ数年、若手とは別に、固定電話事業に属していた技術者のチームが新商品開発をけん引しているという。

「電話の技術屋さんのリソースが非常に重要でした。固定のお客さんを持っていないからフットワークが軽いし、他部門の技術者とは違うエッセンス、違う視線でビジネスを見ることができる」

技術者は、担当分野によって持っている技術が違うのでは?

「実際にそう思っている一部の技術者もいるようですが、僕は全然そうは思っていません。技術はしょせん技術。市場が違っていても、掘り下げれば原理は同じ。極論ですが、僕はそう思って技術開発部門を統括しています。選択と集中をリストラの口実にする方々や、要らないものをどうしようかと迷う方もおられますが、それはちょっと違うのでは。ちゃんと共通部分があるのだから、そこを見なきゃいけない。地震計や緊急地震速報の端末も、気象の観測装置も、ひょっとすると(国際宇宙ステーションでメダカを使った実験を行う)水棲生物実験装置も、CPUやOSはみんな同じ」(柴田氏)