宇宙に送り込んだ製品は2700超

東京都内からJR在来線を乗り継いで約100分。JR本庄駅で下車し、車で約10分程度北東へ向かう。

明星電気社長
石井 潔
模型は国際宇宙ステーション「きぼう」。前職ではジェットエンジンが専門。「20~30個の小型衛星を打ち上げて、1時間に1回日本の上空を通せば、地震などの災害がリアルタイムで観測できる」。

道々散見される工場群から、積極的な企業誘致で「北関東有数の工業都市」といわれるまでになった伊勢崎市の横顔が窺えるが、その利根川沿いに、明星電気は4階建ての本社を構えている。

建物内を巡回し、取材場所に向かう途中、ところどころで仕事中の社員の方々に「こんにちは」と明るく挨拶された。

「できそうにないような仕様のものでも、パッと迅速に動いていろいろと知恵を出し、ワッと一気につくってくれる会社」――12年6月、宇宙・防衛機器メーカーのIHIエアロスペースから移籍し社長に就任した石井潔氏(59歳)が、同業他社から見た印象をそう語る。

「私自身が直接お付き合いしたことはなかったんですが、よく一緒に仕事をしていた古巣の技術部隊、特に電気関係の担当からそう聞いていました」(石井氏)

実際に社長に就任してから、その印象は確固たるものとなったようだ。

「一つ一つの仕事に関して、非常に生真面目に取り組む。与えられた課題に向かって猛然と挑戦してやりとげてしまう、という感じがします」(同)

10センチ四方の超小型衛星「WE WISH」は、そんな明星のものづくりの典型だ。プロジェクトを遂行したのは、入社2~5年目の20代若手と10年目の30代中堅、サポートに入った部課長クラスの計5~6人。11年3月にJAXAが公募を開始し、5月に応募。そのまま6月にOKが出た。それからわずか1年足らずの間に、最終的なフライトモデルを組み上げた。柴田耕志・取締役技術開発本部長(52歳)が言う。

「あまりに開発期間が短く、特に後半はきつかった。完成品はどうしても手戻り(やり直し)が発生します。太陽電池パネルを筐体に貼るとき、パネルと筐体の間に微量の空気が入り、宇宙空間でそれが膨張してパネルを破壊する事故がよく起こる。その隙間なく貼る技術がかなり難しかった。タイムスパンの長い案件の多い宇宙関連で、ここまで短いケースはなかなかありません」