“モラハラ夫”の中には、子どもを将来有名な大学に入れようと、半ば虐待に近い過剰な指導を繰り返すタイプの人がいる。モラハラ離婚に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「ある『スパルタ教育パパ』タイプのモラハラ夫の場合、実家との関係も疎遠で友達も少なく、職場では出世コースから外れていた。そのため、子どもの教育にのめり込むようになっていたようだ」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。また、罵倒や叱責しっせきといったモラハラの言動について具体的に書いていますのでご注意ください。
勉強中、机に顔を伏せる少年
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「立派な経歴、真面目で頼りがいがある」好条件に引かれ結婚

会社員のA子さん(28歳)は、結婚相談所で、有名企業に勤める会社員の男性と知り合いました。

男性はA子さんより10歳年上で、地方の名門国立大卒。「立派な経歴に真面目で頼りがいのある年上の男性」と、全てが好条件に見えました。

男性からは結婚を前提に交際を申し込まれ、交際から半年で結婚しました。

夫は地方の実家とは疎遠だし友達も少ないからと、結婚式を挙げることに消極的でした。A子さんは友達を呼びたかったものの、義理の両親との付き合いがないのは気楽だと思い、夫の希望に合わせてこぢんまりとした式を挙げました。

夫は無口でおとなしく、残業もなく職場の飲み会にも行かず、友人と出かけるようなこともありません。無趣味なため、家ではずっとテレビやスマホを見ていて、A子さんは真面目で良い夫だと思っていました。

「息子を東大に入れるため」中学受験にのめり込む夫

A子さんは結婚の翌年に妊娠して、それを機に退職。男の子を出産した後は、専業主婦として子育てをすることになりました。

夫に異変が表れたのは、息子が小学校に上がった頃です。

夫は「息子を東大に入れる、そのためには中学受験で成功しないといけない」と言い出しました。

A子さんも、高学歴の夫にならって息子にもいい大学に行ってほしいと思っていたので、その方針に反対はしませんでした。

すると夫は息子の教育にのめり込むようになりました。

できないと怒鳴り、付きっきりで勉強

自分で選んだ問題集を買ってきて、一日にこなすページ数を決め、付きっきりで勉強させます。

最初の頃は順調でしたが、小学3年生になる頃には、息子はだんだん行き詰まるようになりました。

息子が一日に決めたページ数をクリアできないと、夫は「こんなこともできないのか」「俺はこのぐらいの難易度は簡単に解けたぞ」と怒鳴ります。間違えた問題はその日のうちに解けるまでやり直し、深夜になっても夫は寝ることを許しません。

見かねたA子さんが「明日は学校だから」と言うと、夫は「学校なんか行かなくていい、どうせ低レベルな授業しかしていないんだ」と怒鳴ります。

しかし息子が風邪をひいて学校を休みたいと言うと、「学校すらちゃんと通えないような怠け者は将来負け組になるぞ」とまた怒鳴ります。

学校に「無駄な行事をするな」などとクレームを入れることもあり、そのたびにA子さんは肩身の狭い思いをしていました。