「低学歴のお前に何がわかる。口を出すなら離婚だ」

夫のスパルタ指導は勉強以外にも及びます。「文武両道が大事だ」と言い、息子に空手を習わせて、その送迎や指導も熱心に行います。息子は本当は水泳を習いたがっているのですが、「水泳なんかじゃ強い心が身に付かない」と夫が反対したのです。

毎日こういった生活で、休日は家族で行楽に出かけることもありません。

ある時A子さんが息子の問題集を見てみると、なんと小学校6年生向けのものでした。夫はどんどん先取り教育をさせて、3学年も上の問題を解かせていたのです。

「これじゃできないのも当然だから、もう少し年齢に合った問題集がいいんじゃない?」とA子さんが言うと、夫は「俺は3年生の時にはこのレベルの問題を解いていた」と言いました。

「そもそもまだ3年生でこんなに頑張らなくても、毎日疲れてるみたいだし……」と、A子さんが日頃のスパルタ教育について口にすると、夫は火がついたように怒り始めました。

「受験の厳しさも体験したことがないくせに、低学歴のお前に何がわかる。俺も親にこうやって厳しく勉強と空手をさせられて、寝ないで勉強してここまできたんだ。俺のやり方に口を出すなら離婚だ、親権も俺がもらうからな」

今までの夫とは別人のようなけんまくと、離婚して親権をもらうと言われたことに、A子さんはショックを受けました。

「息子を守るため」離婚を決意

小学6年生の問題集に取り組む息子は誤答も増え、夫は激しく怒るようになり、A子さんに「今日は息子の食事は作らなくていい」とご飯抜きを命令したり、息子に寝ないでずっと立っているように命令するようになりました。

それは虐待ではないかと言うと、夫は「俺の邪魔をするのか」とA子さんに物を投げつけます。

家庭内は夫が絶えず怒鳴り、息子は憔悴しょうすいしている状態になり、A子さんは「これではいけない、息子を夫から離そう」と決意しました。

こうして、A子さんは私の法律事務所に相談にいらっしゃいました。

A子さんの話の内容は、モラハラを通り越して虐待に近いものでした。A子さんがこっそり録っていた録音には、深夜に泣きながら勉強をする息子を怒鳴りつけている夫の声が入っています。

A子さんは「別居して離婚したいです。いつも『離婚だ』と言っているから夫も応じるはずです」ということで、相談後、息子を連れて実家に帰りました。