普段は働かないがいざというときは命がけで縄張りを守る

ろくでもないヒモ男みたいな印象であるが、ライオンのオスはオスで、群れを守るために日々神経をすり減らしている。縄張りを絶えずパトロールし、群れを狙う侵入者があれば威嚇してすみやかに追いやる。

それでも相手が向かってきたら、売られた喧嘩は必ず買わなければならない。それが群れを支配するオスの使命だからだ。縄張りを主張する手段は、基本的に尿や糞などでニオイをつけること(マーキング)で成り立つ。

メスにとっても、群れを乗っ取られたら、自分の子どもたちも皆殺しにされてしまう。安心して子育てするためには、普段ごくつぶしのオスであっても、強ければ「まあ仕方がないか」といった感じなのだろう。

ネコ科でライオンだけが群れを作るのはなぜか

そもそも、ネコ科動物の中で唯一ライオンだけが群れで暮らす理由は、①狩りをするときに集団のほうが有利なため、②群れを乗っ取ろうとするよそ者のオスから子どもを守るため、と説明されることが多い。

小さな丘の上で休むライオンの家族
写真=iStock.com/Henk Bogaard
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しかし、動物学者ジョナサン・スコットらの調査では、この2つの説に疑問が投げかけられた。まず①については、集団でも狩りの成功率は高くなかったうえ、成功したとしても多数で分け合うと各配分は限られてしまうため、メリットが少なくなる。

②の説では、単独で暮らすトラやヒョウも、よそ者のオスが子どもを殺す習性があるため、この2つの説によってライオンが群れをつくる理由にはならないと結論づけられた。

そこで注目されたのが、縄張りの“地の利”である。同調査によると、28のライオンの群れを観察した結果、水や食料が最も手に入りやすい場所を縄張りにしている群れが、最も繁殖率が高かったという成果である。

つまり、健康第一な繁殖に適した場所を守るために、リーダーオスを中心にライオンは群れで暮らす習性を身につけたのではないかということらしい。