低出生体重児は健康リスクが高い
小さく産んで大きく育てるといった間違ったキャッチコピーのもと、厳しい体重管理指導が行われていた背景には、妊娠中毒症を減らす目的がありました。
しかし、低出生体重児は、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になるリスクが高いことがわかりました。
やっとそのリスクに気づき、先進国の中でも飛び抜けて低体重児が多く厳しい体重制限を行う日本への世界からの批判もあり、日本産科婦人科学会が2021年3月になってやっと新たに「妊婦の体重増加指導の目安」を公表しました。
現在は、妊娠中の体重を制限するどころか、積極的に増やす必要があることがわかっています。
「やせ神話」に洗脳され続けてきた日本女性たちが、妊娠しても太りたくない、という心理はわかります。しかし、それは女性たちが悪いのではありません。「やせることがよいことである」と洗脳し続けてきた日本の社会が悪いのです。
世界と比較しても厳しすぎるBMI基準値で健康診断でメタボを目の敵にし、太っていることがまるで不摂生に食べ過ぎたり、運動不足が原因のダメ人間に扱う風潮があります。
太っていることは自己責任である、という考え方は明らかに間違っています。
モデルの死亡が相次ぎ、海外ではやせすぎモデルを規制
世界全体を見てみると、日本人女性のやせすぎが大きな問題になっています。1983年の20歳代女性のやせすぎは14.6%でしたが、1993年には17.1%、2003年には23.4%と激増しています。
世界では、やせすぎモデルによる若年女性のやせ願望や肥満恐怖、自尊心や食行動に与える悪影響が徐々に報告されるようになりました。その後、医療業界からも規制を求める声が上がるようになりました。
2006年8月2日、22歳のウルグアイ出身のトップモデル、ルイゼイ・ラモスさんがファッションショーに出演中、キャットウォークを歩いた後に気分不良を訴え、控室で死亡しました。
死亡時のBMIは14.5。死因は摂食障害に伴う低栄養によるものでした。その半年後、同じくモデルの18歳の妹、エリアナ・ラモスさんも摂食障害で死亡しました。
アメリカのモデル団体は、ファッションモデルの31%が摂食障害を持ち、64%がやせろといわれた経験があると報告しています。
やせすぎモデルの死亡が相次ぎ、やせすぎモデルの女性の心身に対する悪影響が明らかになり、欧米各国や業界団体はやせすぎモデルの規制に乗り出しました。
2006年、イタリア政府は、BMI18.5以下と16歳未満のモデルを規制しました。スペイン政府はBMI18以下のファッションモデルのファッションショー出場の禁止措置をとりました。
2012年にイスラエルがBMI18.5以下のファッションモデルのファッションショーと広告への出演禁止と、画像を修正した際はそれを明記することを法律として制定しました。
フランスでは4万人が拒食症、そのうちの9割が女性です。
2015年に、「BMI18以下のモデルは活動禁止」をフランス国民議会が打ち出したところ、業界からの猛反撃があって断念し、2017年にBMI数値を設定せずに「極端にやせているモデルは活動禁止」という法律が施行されました。
欧米各国では、摂食障害の発症を予防するために、やせすぎモデルを規制する取り組みが進んでいます。それなのに相変わらず日本はやせているモデルを起用し続けています。どうして日本ではそのような取り組みが行われないのか本当に不思議です。