社会課題をいかにビジネスにするかが課題

ただ、社会課題をビジネスで解決することは、それほど容易いことではありません。

顧客ニーズを起点にして、新たな製品やサービスを作るというのは、考え方として比較的わかりやすいと思います。顧客に関するデータをきちんと調べ、論理的に考えていけば、どのような製品やサービスが求められているのかが見えてきます。それをビジネスモデルに落とし込むことができれば、新規事業が動き出します。

一方、社会課題や社会ニーズは漠然としているため、どこから手をつけたらいいのかが、そもそもわかりにくい。しかも、当初はまったく儲かりそうに見えません。

社会課題の解決をいかにビジネスにするかが、ビジネスプロデューサーの腕の見せどころです。

大企業こそ向いている

社会課題を解決するだけなら、ビル・ゲイツ氏のように財団を作って寄付をするなど、ビジネス以外の方法もあります。しかし、ビジネス以外の手法では、寄付金やボランティア、補助金などの限られたリソースが尽きてしまえば続けることができません。篤志家の膨大な資金も無尽蔵ではありません。利子の範囲で寄付をするのであれば元本は減りませんが、それを超えて使えば、いつかはなくなります。

ところが、社会課題の解決をビジネスにできれば、儲けが生まれます。儲けが出るビジネスには持続性があります。これが非常に大事な点です。

若い人たちの中には、「社会課題の解決を持続できるかたちでやりたい」と思って、大企業に入社した人が大勢います。ところが、既存事業がうまくいっている大企業ほど、新規事業は「非日常」の業務です。「それ、絶対に儲からないだろう」などと言われてしまい、なかなかやらせてもらえないのが現状です。

しかし、社会課題を解決するビジネスを手掛けるのは、大企業にこそ向いています。ベンチャーや中小企業ではなし得ない規模の投資や多数の優秀な人材、他社と連携するときに役立つ知名度・ブランド力の高さ、事業が立ち上がるまでに待てる時間軸の長さ。どれをとっても、社会課題を解決するような大規模なビジネスプロデュースは大企業にぴったりなのです。

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写真=iStock.com/scanrail
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