「節税」というお金の創出で5年間に5億円

そこで私たちは、次のようなビジネスエコサイクルを作ることにしました。

まず、日本政策投資銀行に協力してもらい、日本生命などの保険会社や地方銀行などと一緒になってファンドを作りました。そして、事業の事務局として新たに設立したDIの子会社が、そのファンドから運営資金を預かります。

そして、豊田市内の企業や全国規模の大企業に呼び掛けて、その資金でスポーツや趣味の会などの高齢者向けサービスを展開してもらいます。現在、50社以上が様々なサービスを展開し、それらを活用する高齢者は月間2000人に迫る規模となっています。

先ほど紹介した研究を行なった機関(日本老年学的評価研究機構:JAGES)に市内の高齢者の生活状況や活動レベルを評価してもらうと、将来の介護費をどれくらい削減できそうかが予測できます。そこで、市が負担するはずだった介護費のうち、削減できた金額の一部を事務局が受け取り(財源は、市の財政に加え、企業版ふるさと納税を活用)、ファンドにリターンとして支払います。

ファンドを作り、投資家から資金を集める

事務局がファンドから資金を預かり、事業者に提供

資金提供を受けた事業者が高齢者にサービスを提供

評価機関がサービスの効果(介護費がどれだけ減るか)を評価

減った介護費の一部を、成功報酬として、市が事務局に支払う

事務局がファンドにリターンを支払う

これでグルッと1回転するビジネスモデルです。

三宅孝之『「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』(PHP研究所)
三宅孝之『「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』(PHP研究所)

事業規模はスタートから5年で5億円。毎年、市内の5%以上の高齢者にアクセスすると設定していますが、2年目に入り、急速に知名度が増し、豊田市全体に広がってきました。

参画している企業が素晴らしく、サービスを次々と進化させたり、相互に連携したりしながら、市民をより楽しく元気にするための工夫がなされ続けています。

しかも、その取り組みには報酬が支払われますし、頑張った豊田市での介護予防事業への参加企業はその分報われるという仕組みもビルトインされています。介護予防事業という以上に、新しい「コミュニティ産業」が創出される息吹いぶきを感じています。

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