iDeCoと企業型確定拠出年金で年1兆円の積立投資が

規模が大きくなっている積立投資ですが、前述した「投信積み立て、ペース倍増 年換算2.4兆円」は実体を表していない、と私は考えています。なぜなら企業型の確定拠出年金を通じた資金流入分、約1兆円がカウントされていないからです。

2001年秋にスタートした企業型の確定拠出年金制度は、805万人の会社員が対象となっており、資産額18兆7000億円になっています(2023年3月末)。

ここから2022年3月末の統計データでは、年1兆6000億円の資金流入があり、その約6割が投資信託購入なので、ざっと9600億円になり、1兆円の上積み、ということになります。

企業型の確定拠出年金制度に関しても「老後資産形成の取り組み」「市況によらず少額の積立投資を継続」「解約は基本的に行われない(60歳までもらえないため)」といった傾向があり、これらは前述の積立投資信託の拡大ポイントと同じです。

このように近年、日本の投資信託市場は急拡大していますが、株価上昇だけがその要因ではありません。つみたてNISA、iDeCo、企業型の確定拠出年金を通じて、一人ひとりが実践する毎月数万円以下の「少額で、毎月一定額の継続購入」に支えられた側面が大きいのです。

生保協会確定拠出年金(企業型)の統計概況(令和5年3月末現在)
運営管理機関連絡協議会 統計資料

オフィス街に設置された屋外電光掲示板の株価掲示板を見るビジネスパーソン
写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです

個人はiDeCoとNISAで税制優遇の仕組みを有効活用

今後も個人の積立投資の流れは続くと思われ、その流れにこれまで投資しなかった人々もようやく重い腰を上げるかもしれません。

そうした積立投資ビギナーへ何かアドバイスするなら、やはり「税制優遇口座の活用」と「ポイント獲得」の2つです。

まず、税制優遇についてはNISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。どちらも運用益が売却時非課税となる魅力があり(通常は収益の20.315%が課税)、投資をするには必須の選択肢です。

これに加えて、iDeCoに関しては、60歳以降の老後資金目的に限定されるものの、掛金に対する所得税や住民税を軽減させる効果もあり(所得控除)、税負担の重い現役世代にとっては必須の選択肢です。

それぞれ金融機関選びによって、商品ラインアップや手数料体系が異なるので、比較検索サイトなどを活用してみるといいでしょう。

特に、NISAについては、2024年から新しいNISA制度として生まれ変わります。「一般NISA」と「つみたてNISA」の選択制だったものは一元化され、年間拠出枠は拡大、また制度として恒久化されることが決まっており、活用の幅はさらに広がっていくことになるはずです。