「捜査のハードルが上がるのは当たり前」

文春によると、X子が電話で呼んだ当時の不倫相手Yの供述を軸に、捜査は進み、2018年10月9日に、木原邸に踏み込む。木原氏の妻に任意同行を求めるが、木原氏が立ちはだかり、「今日は勘弁してくれ」「後から連絡する」と任意同行を拒否。送迎車で2人はその場を後にしてしまったという。

その時、木原氏は自民党情報調査局長。「(相手は国会議員=筆者注)捜査のハードルが上がるのは当たり前の話だろ」(佐藤氏)

しかし、翌日からX子の聴取が始まったという。

「木原との第二子が生まれたばかりで子育てが優先。聴取は午後1時頃から夕方までが多かった。でも、最初は無口で全然喋らないさ。それでも連日、自宅近くの病院まで車で迎えに行き、警視庁本部で聴取する日々が続いた」(佐藤氏)

世間話には多少の受け答えをするが、事件のことはまったくしゃべらなかったという。DNA採取のための採尿や採血、ポリグラフ(嘘発見器)も拒否したそうだ。木原氏自身も捜査員と複数回面会し、「女房を信じているから」と語ったが、こんなこともいっていたというのである。

「〇六年当時に捜査していたら結婚もしなかったし、子供もいませんでしたよ。どうしてそのときにやってくれなかったんですか」

ノートとペンと小型マイク
写真=iStock.com/Michal_edo
※写真はイメージです

今後は「木原氏発言」のドラレコが焦点になるか

X子は取り調べが終わるとタクシーに乗り込み帰宅するが、その際、木原氏と落ち合って共にタクシーで帰ることもあったという。捜査員は常に彼女の行動を確認していたのだろう。

当該のタクシーを探し出し、車に取り付けられていたドライブレコーダーをつぶさに分析して、2人の映像と会話の内容を掴んでいたというのである。

木原氏は、「大丈夫だよ。俺が何とかするから」

そしてこうもいったという。

「俺が手を回しておいたから心配すんな。刑事の話には乗るなよ。これは絶対言っちゃ駄目だぞ。それは罠なんだから」

佐藤氏はこの声を聞いて、「もうX子は絶対に喋らないと思ったな」

この重要な証拠であるドラレコは、「捜査をやめようとなっても、資料はちゃんと保管する」(当時の捜査一課の管理官=文春8月10日号)そうである。もし、再び捜査が始まれば、これはもっとも重要な証拠の一つになるのは間違いない。

しかし、10月下旬、国会が始まる直前、突然、「明日で全て終わり」と上司である佐和田立雄管理官(当時)から告げられたというのである。

X子の取り調べが佳境を迎えていた。物証は乏しいが、証拠を積み重ね、これから頑張ろうというとき捜査にストップがかかったのだ。