6月27日、母親の自殺幇助の疑いで歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者が逮捕された。猿之助容疑者と同じ暁星学園OBで、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「今回の事件と、その発端となった週刊誌報道からは、仲間内だけで許されてきた内輪の『ノリ』と、狭い世界特有の繊細さを感じた。コンプライアンスと透明性が重視されるなかで、こうした暗黙の了解は通用しなくなっている」という――。
歌舞伎座
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香川照之が見せる東京の男子校の「ノリ」

6月27日、歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者が、みずからの母親の自殺を手助けした疑いで逮捕された。事件の捜査はつづき、真相の解明が急がれる。

一方、従兄弟であり、おなじ歌舞伎俳優の香川照之氏もまた1年前にセクハラが発覚し、活動を大幅に縮小している。2人は、ともに男子校、それも、暁星学園という“名門”出身だった点でも共通している。

香川照之氏は、ドラマやCMだけではなく、バラエティ番組でも引っ張りだこだった。

特に、クイズトーク番組「ぴったんこカン・カン」(TBS系)には、男性ゲスト出演回数として1位を誇り、準レギュラーと呼べるほど、しばしば出演していた。

登場時には、しばしば、香川氏の出身校である、東京の暁星学園の同窓生や同級生を訪ね、華麗なる人脈を披露している。

香川氏の先導で、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を合唱するのも定番で、東京の男子校特有の「ノリ」は、微笑ましく受け入れられたのだろう。

3年前のプレジデントオンラインでも、コラムニストの辛酸なめ子氏が、「超ヒット『半沢直樹』の顔芸は名門カトリック系暁星高校の男子校ノリが生み出した」(*1)と題した記事を掲載している。

TBS系で毎週日曜日夜9時から放送されていたドラマ『半沢直樹』の主要キャストに、香川氏、市川氏だけではなく、北大路欣也氏、賀来賢人氏といった幅広い年齢層の暁星OBが出演していた。

辛酸氏が、「主要キャストの顔芸が激しく、アドリブも独創的になっていったのは、同じ男子校のノリがあったのでしょうか」と推測しているように、香川氏がテレビで見せるアクの強さは、「ノリ」として認められてきた。