評論家の宇野常寛さんは、学生時代、走ることが大嫌いだった。だが、今は人生の最大の楽しみのひとつになっているという。いったいなにがあったのか。宇野さんの著書『ひとりあそびの教科書』(河出書房新社)より紹介する――。
森を通って道路を走る男性ランナー
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体育が嫌いだった僕が走ることにハマった理由

10代のころは、身体を動かすことが基本的に嫌いで、特に走ることが大嫌いだった。運動やスポーツが好きな人たちの中でさえも、ただ「走る」ことが好きな人はそれほど多くないように思う。

体育の授業や部活動の中でもたいてい「走る」ことは体力づくりのためにすることで、高度な技術を身につける下準備として苦痛を我慢して行うものだと考えられていることが多い。そして「走る」ことそのものが求められる陸上競技でも、つらく、苦しいことを我慢して走り切るとタイムが縮み、競技に勝つことができると教えられるはずだ。