ランニングにご褒美をつけてみる
大人になった僕が走ることを始めたきっかけは、なんだかものすごく中年の事情で申し訳ないのだけれど、30代前半のある日、健康診断を受けて医者に注意されたことだ。
あんたこの数年で急に太っているよ、これは絶対に生活を改めないとそのうち大きな病気になるよ、と結構真剣に怒られてしまった。子どものころ、身体が弱く病気がちだった僕だが高校生のころからだんだん健康になって、このころは滅多に医者にもかからなくなっていたので、これはかなりショックなひとことだった。たしかに20代なかばのころに比べて、このときの僕は20キログラムほど太っていた。
僕は一念発起して、ダイエットを始めた。1日の摂取カロリーを厳しく制限して、ジムに通ってウォーキングマシンで運動し、さらに近所を走った。
ほぼ毎日、自宅から約2.5キロメートル先の新宿東口のヨドバシカメラまで走っていっては、そんな自分への「ご褒美」としてトミカを1台買って戻ってきていた(これはあとで取り上げる僕のミニカー集めのきっかけになっている)。
痩せた私に訪れた変化
何か目標があったほうが「やりがい」をもって走ることができると思ったのだけど、それは大きな間違いで、最後までやりがいを感じることはなかった。長距離を走ることに慣れたいまとなっては、2.5キロメートルのランニングはほとんど準備運動のようなものなのだけど、当時の僕にはとてもつらいことだった。
あのころの僕は「痩せる」という目的と、ヨドバシカメラでトミカを買うという「ご褒美」のためだけに、走るという「苦痛」を我慢していたのだ。
そして、半年ほど経たって予想以上に痩せることに成功すると(80キログラムほどあった体重が20キログラムほど落ちて、60キログラムほどになった)、僕はパッタリと走ることをやめてしまった。「目的」を果たしたので、苦痛を我慢する必要がなくなったのだ。