2010年代、この「暴力は犯罪です。」ポスターの横に、痴漢の漫画シリーズが貼ってあったわけです。

私は、「駅員への暴力は犯罪です」ポスターと同じタイプの痴漢ポスターを作ってもいいのではないかと思っていました。「体を触る」「性器をこすりつける」「精液をかける」「陰部を見せる」「下着の中に手を入れる」「盗撮する」などもっとたくさん犯行の方法があるけど、それらが「暴力(性暴力)で犯罪である」と明記してもいいんじゃないかと。しかし他の犯罪と違って、具体的な内容を掲示することがはばかられるのが、痴漢犯罪の問題の一つでもあります。

10代の被害者が被害を届け出る難しさ

10代の子どもたちも、痴漢の被害者の多くを占めています。どれだけ被害者に「被害を届け出ろ」と言ったって、限度があるというか、そもそもが無理な話なのです。

被害者が「痴漢に遭った、助けて」と言いやすくなるかどうかは、ポスターの絵柄を工夫することではなく、周りにいる人たちの知識と意識と認識がとても重要だと、被害者の人たちはずっと声を上げていました。

痴漢犯罪の行為はバリエーションがあり、被害者にさえもわかりにくいです。「周りにいる人が、痴漢という犯罪がどういうものかという知識を持っているか、絶対に許されないことであるという認識があるかどうか」がとてつもなく重要です。

その知識と認識が、実際の痴漢犯罪行為を見逃さないという意識につながります。