楽しかったはずの試合がいつの間にか恐怖に

最終ラウンドを終え、コーチと一緒にクラブハウスに引き上げる道のりは、重苦しいものでした。2人とも言葉を交わすことはありません。マーヴィンの耳に入ってくるのは、背負っているゴルフクラブが歩くたびに規則的に揺れる音だけでした。

クラブは揺れるたびにカチカチと、まるで爆発寸前の時限爆弾のタイマーのような音を立てます。あまりにも張り詰めた空気で、マーヴィンはその場から逃げ出したいと思いました。クラブをチームのバンに積んだ直後に、コーチからこう告げられました。

「明日の練習は7時半からだ。準備しておけ」

それからはずっと厳しい練習が続きました。次の大会では決勝ラウンドまで進んだものの、以前は楽しかった試合が怖く感じられるようになりました。ミスをするたびに、激しく怒られます。

ゴルフのせいで友達との間にも距離ができた

そんなコーチにマーヴィンは、いつの間にか不信感を持つようになります。コーチのことで心をかき乱されて目の前のことに集中できなくなってしまったのです。

ネガティブな思考に陥ると、筋肉がこわばり、パフォーマンスが低下してしまうことはよく知られています。

いいコーチであれば、選手がネガティブなことを考えないようにさせるものですが、このコーチはゴルフでは特に欠かせないメンタルの強さをマーヴィンから奪い取るばかりでした。

放課後は毎日、ゴルフの練習だったので、友達と距離ができていくように感じられました。週末は毎週、試合です。マーヴィンは練習をやめて家で過ごしたいと思うようになります。

このようにストレスのかかる状態が何週間も続いて、マーヴィンは、ゴルフはもうやりたくないと両親に告げます。