腸のバリアを破壊する6つの要因
バリアの透過性を促進する容疑者はグルテンだけではないことにも注意してほしい。腸を漏れやすくする可能性のあるほかの要因を挙げておこう。
飲酒
普段アルコールを飲まない健康な人がウォッカを一気飲みすると、血液中のエンドトキシンと炎症性サイトカインが劇的に増える。これはアルコールが炎症を引き起こし、腸の透過性を促進するといわれているためで、常習的な飲酒が肝臓やほかの臓器に与えるダメージについていくらか説明している。
果糖
天然の果物の食物繊維やファイトケミカルから取りだされた果糖は、腸の透過性を促す可能性がある。市販の甘い飲み物に広く使われている高果糖コーンシロップやアガベシロップは、特に要注意だ。
慢性的なストレス
大勢の前でのスピーチ(多くの人に共通するストレス要因)は、腸の透過性をたちまち誘発することがわかっている。これは慢性的なストレスが健康を損なう新たなメカニズムを示している。
運動のしすぎ
持久力が必要なアスリートは、有酸素運動を続けるストレスによって腸の透過性を生じさせるかもしれない。
脂肪を糖質と一緒に摂る
動物実験では、高脂肪食(糖質も含まれていることが多い)は、腸透過性亢進と炎症を誘発することがわかっている。
加工食品の添加剤
加工食品には、成分を均一にして滑らかにする乳化剤がたっぷり入っている。乳化剤は、サラダドレッシングやアイスクリーム、ナッツミルク、コーヒーフレッシュなどの加工食品によく使われている。動物実験では、乳化剤をちょっと餌に入れるだけでも、腸の細菌叢が大きく変化し、粘膜にびらんができて、細菌と上皮細胞の平均的な距離が半分以上も減ったという。
こういった刺激はすべて、たとえグルテン・フリーの食生活を送っていても、エンドトキシンを血液中に漏れやすくする可能性がある。
逆に、ケルセチンなどさまざまな植物由来の成分(タマネギやケイパー[ケッパー]、ブルーベリー、紅茶などに含まれるポリフェノール)や、Lグルタミンというアミノ酸は腸の透過性を減らし、バリアの働きを高めるという研究知見がある。
そして驚異的な作用があるのに過小評価されている栄養素、つまり食物繊維は、何より大事かもしれない。この食物繊維が腸内細菌の餌となって酪酸塩がつくられ、その酪酸塩をエネルギーにして上皮細胞が粘液をつくり、その結果、腸壁を保護する力が増す。逆に食物繊維をあまり摂らないと、腸内細菌は飢えて、粘液層を食べるよりほかなくなってしまうのだ。