ストックオプションが効果的な企業とそうでない企業

もう1つ、社員に株を持たせるケースとして、ストックオプションがあります。社員が自社株を一定額で買える権利がストックオプションですが、私が在籍していた野村證券では一時期、発行価格1円のストックオプションを社員に配ったことがあります。

2008年に破綻したリーマン・ブラザーズの日本法人を野村證券が継承したときの話です。これにより野村證券は、平均年収ウン千万円の人たちを引き受けることになりました。そこで野村證券ではこのようなストックオプションを配ったようです。

元リーマン・ブラザーズの人たちは野村證券に愛着などないので、売却できる時期が来たら多くが株を売ってしまいました。当時の野村證券の株価は1株300円程度だったので、売れば必ず儲かります。「さっさと売ってしまえ」という感覚でしょう。渡す相手によってストックオプションは、そういうデメリットが生じてしまいます。

渡部清二、複眼経済塾『株主総会を楽しみ、日本株ブームに乗る方法』(ビジネス社)
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もちろん株価の上昇が自分の仕事ぶりに連動するという意識を持たせ、仕事に取り組ませることができれば、ストックオプションはよい方向に行きます。大企業は自分の働きと株価が結びつきにくいので、ベンチャーのほうが効果は出やすいでしょう。

実際ベンチャーには、上場前から社員にストックオプションを与えるところも少なくありません。複眼経営塾の塾生にも経験者が何人かいます。会社が上場し、ストックオプションを使って2000万円を手に入れたので、株の勉強に来たといった人たちです。

ただベンチャーのストックオプションも、上場したら株を売って会社を辞めるのが目的になる人もいます。そのあたりはやはり、さじ加減が難しいように思います。

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