まるでファンミーティングのような株主総会を開く会社がある。四季報の達人と呼ばれる渡部清二さんは「その会社の商品の愛用者であれば魅力的だし、消費者に近い個人投資家が経営者と意見を交換することで、商品やサービスの改善に役立つ」という――。

※本稿は、渡部清二、複眼経済塾『株主総会を楽しみ、日本株ブームに乗る方法』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

レイブパーティー
写真=iStock.com/gilaxia
※写真はイメージです

株価が下がると買いが入るオリエンタルランドの株

先日、三井住友銀行の元専務の方と株の話をしたとき、こんなことを言われました。「株主優待を楽しみにしている人は、その会社が利益を出しているか否か、それを気にしていない」と。

たとえばオリエンタルランドの株を持っている人は、株主優待でもらった東京ディズニーリゾートのパスポートを孫にあげて、喜ぶ様子を見るだけで十分なのです。だからオリエンタルランドの株は、株価が下がったほうが、すぐに買いが入るそうです。業績がよい悪いではなく、株主優待が欲しくて買っているからです。これも株主と会社のよい関係の1つでしょう。

株主優待ということでは、とくに親和性が高いのが知名度の高いBtoCの会社で、典型が鉄道会社です。沿線住民は、その鉄道を必ず利用します。株主優待の乗車券をもらうために株主になっている人は少なくありません。

そもそも歴史を遡れば、鉄道は何もない場所に線路を引き、周囲に住宅地をつくって住民を運ぶというビジネスモデルです。沿線住民が鉄道を使うのが前提で、おそらく計画段階から住民が株主になることも想定しているはずです。

株主優待は会社と株主のよい関係をつくる大事なアイテム

電車の中吊り広告などでも、株主募集のポスターを見かけたりします。航空会社も同じで、株主割引券を目的に航空会社の株主になっている人はたくさんいます。

飲食店もそうです。我が家では自宅に近いファミレスの株を買い、株主優待で飲食やオリジナル商品の購入に利用しています。この店のタレが好きな妻は優待券が届くのを楽しみにしており、店側も優待券があることでお客に来てもらえるなら、プラスアルファの売上げも見込めます。

株主優待は会社と株主のよい関係をつくる大事なアイテムといえますが、同じようなことはBtoB、つまり企業間取引が主体の会社でも可能です。

たとえば部品メーカーなら、その会社の部品が使われている最終製品を送るのも1つです。あるいは地域の特産品を送る方法もあります。静岡県袋井市にある運送会社、遠州トラックは静岡産のメロンやお茶などを株主優待で送っています。

このようなやり方を通じて会社に親しみを感じてもらったり、自分たちの地域を知ってもらう。これもまた会社のファンをつくるきっかけにできます。