公共事業が盛んな地方の建設業界が談合体質から抜け出せないのは、自白をしないほうが長期的に利益を得られるからだ。談合が「和の精神」を体現した美徳であり、その証拠として建設会社の利益率の低さを挙げる識者がいるが、本当だろうか。
談合グループが出来上がった当初は、それなりに各社に利益が出ていたと思われる。しかし、談合の恩恵に与ろうと次々に公共事業の入札に参入する企業が増え、グループは肥大化する。さらに入札に参加するためには政治家に献金しなくてはならない。こういったプロセスを経て、一社ごとの利益は結果として年々薄くなったというのが真実ではないのだろうか。さらに長年の談合体質で企業としての生産性も落ちているから、健全な価格競争には戻れない。
最近、ゲーム理論を応用した談合阻止のしくみが誕生した。1993年に米国で始まったリニエンシー(措置減免)制度で、談合を最初に通報すると高額な課徴金がタダになるというインセンティブを与えたもの。
日本では反対論も根強かったが、2006年の改正独占禁止法から取り入れられ、施行後わずか2カ月で、同制度の初適用がなされるなど、摘発件数も急激に増えている。談合をするよりも、通報したほうがいいというインセンティブを与えた結果であろう。また、匿名で公共工事入札に参加できるような制度を取り入れた自治体では、落札価格が20%前後下落するなどの成果も挙げている。談合(協力)か、通報(裏切り)か、建設会社のジレンマは続く。
※すべて雑誌掲載当時
(構成=河崎美穂)