実質的失業者は公式数字の3倍近く

1990年代、日本は不良債権を抱え大変な苦労をした。問題の先送りが、さらに大きな問題を招くことを学んだはずだ。だが現在の日本を見ていると、今度は雇用の不良債権をつくり出しているように見える。

経済産業省の資料でそのことがよくわかる。そこでは潜在的な失業率を推計しているのだが、公式の失業率が5%程度なのに対して、潜在的な失業率はなんと13.7%で、潜在的な失業者数は905万人にも達している(2009年第1四半期)。

経産省は潜在的な失業者数と公式の失業者数の差を「雇用保蔵者数」としているが、これは本来企業には必要がない、社内失業者のことだ。「雇用保蔵者」を加えると実質的失業者は公式数字の3倍近くに達するという恐ろしい状態になっている。この事態の遠因が雇用助成金だ。本来、雇用を守るはずの雇用助成金が失業を増やしているのである。

雇用助成金とは、企業の雇用維持を条件に政府が企業に支払う助成金のことだ。この莫大な雇用助成金を使って、企業が本来なら必要のない従業員を雇用していることに問題の根本がある。結果として企業が従業員を雇うことができているのであれば、一見何も問題はないように見えるかもしれない。しかし、政府が助成金を出して失業率を無理矢理下げているために、日本の雇用状況の本来の深刻さが隠されてしまっている点に問題の根深さがある。

リーマンショックのような大きな経済的変動が起こったときに短期的な雇用維持政策として実施される雇用助成金には意味がある。しかし、現在の日本での雇用助成金は、ばら撒きが常態化している。雇用助成金のおかげで見かけの失業率は減るかもしれないが、本来の意味での雇用は増えていない。雇用助成金によって雇われている従業員は、本当は企業にとって不要な人材であり、それはその従業員が企業に利益をもたらしていないことを意味するからだ。