資本主義経済では、儲からない企業は市場から退出し、儲かる市場へヒトやカネが移動する。こうして経済が活性化すれば経済全体のパイと雇用が増える。しかし雇用助成金があると、本来なら成長が見込めず企業が退出すべき分野でも、企業は従業員を雇用することができ、非効率な市場と競争力のない企業が残り続け、経済の活性化も本来の雇用増加も阻害される。
また、年々深刻さを増す日本の財政難を考慮すれば、政府が今後も雇用助成金を払い続けることは不可能だ。近い将来、財政難で助成金が打ち切られたとき、競争力のない多くの企業は自力での事業存続が不可能となり、結果として大量の失業者が発生することは明らかだ。
図からわかる通り小泉政権の時代に潜在的な失業率は減少した。これは小泉改革で雇用助成金を減らしたためだ。しかし、麻生政権で方針変換が行われ、再び雇用助成金がばら撒かれ、それは民主党政権にも引き継がれた。世界同時不況の影響もあり、潜在的な失業率は再び急速に拡大しているが、見かけの失業率が5%程度に抑えられているのは雇用助成金のばら撒きによるところが大きく、図のとおり、潜在的な失業者数は爆発的に増えている。
今、日本でやるべきことは、雇用助成金を払って企業に潜在的な失業者を抱え込ませるのではなく、最低所得を保障しながら、労働者が次の職を見つけやすい仕組みをつくることだ。労働者をいかに生産性の高い職場に移すか。それを実現する積極的労働市場政策こそが、今の日本には必要なのだ。
※すべて雑誌掲載当時
(構成=原 英次郎)