「やる気」はお金では長く続かない
「やる気」は脳内でドーパミン神経系が活性化して生まれる。勉強をして褒められた、スポーツで記録を更新できた、その瞬間、脳内では「嬉しい!」という喜びの回路が一気に活性化する。それがドーパミン神経系だ。
ドーパミンに関しては、サルにランプが点灯したらボタンを押すよう教え込み、成功したら褒美としてジュースを与える、という有名な実験がある。この実験でサルはジュース欲しさにボタンを押し続ける。するとサルの脳内ではジュースを味わう前にドーパミンが活性化しはじめる。「喜びの前倒し」が起きるのだ。
「ランプが点いた」→「ボタンを押せばジュースをもらえるはずだ」→「嬉しい!」。報酬を期待するサルは張り切ってボタンを押し続ける。
サルにとって報酬はジュースだが、人間にとって一番の報酬はやはり金銭だ。ドーパミンの具現化がお金であり、社員の「やる気」を出させるために給与でコントロールするのは正しい方法なのだ。だが、ここで問題が出てくる。一つは給与は無尽蔵にアップできないこと。もう一つはこの方法は長期的にはうまくいかなくなることだ。
先ほどの実験ではジュースを与え続けたサルは次第にモチベーションを落としていく。正解したら報酬をもらえることを覚えたサルは「報酬はもらえて当然」と慢心するようになるのだ。
これを給与に当てはめるとどうなるか。「給与=もらえて当然」では社員の「やる気」は上がらないし、もし不測の事態で給与カットにでもなればドーパミン活動は停止し「やる気」ゼロの状態に陥ってしまう。通帳を見て怒りに転じる恐れすらある。これを回避するためには給与以外の報酬体系をつくるしかない。「給与以上に名誉」と社員が感じる報酬システムを。