公判でのウソの証言は最大10年の懲役刑に!
直属の上司が会社の金を横領したとして逮捕されてしまった。警察から取り調べに協力するよう要請された部下は、どう対処すればいいのだろうか……。
警察が犯罪捜査を進める際、出頭を求められて取り調べを受ける被疑者以外の者を「参考人」と呼ぶ。参考人として取り調べの要請を受けた部下は、法律上それを拒否しても、取り調べの際に嘘の供述を行っても、罪の対象とはならない。
上司が起訴され、部下が「証人」として公判に出廷することになったとしよう。その際、証言の前に「嘘を言わない」という宣誓を行うことが義務づけられる。そこで虚偽の供述を行うと、刑法169条の偽証罪に問われることになる。
タレントの羽賀研二氏が、未公開株売買をめぐって、詐欺と恐喝未遂の罪に問われた事件は記憶に新しい。一審では無罪判決を受けているが(大阪地裁・2008年11月28日)、その公判で、羽賀氏の知人である元歯科医師が嘘の証言を行ったとして、偽証罪で在宅起訴された。有罪となれば、偽証罪は3カ月以上10年以下の懲役刑とされている。
上司が個人として関与した横領事件の場合、被害者は会社である。部下は事件にまったく加担していないのであれば、当然、知っていることを正直に話すべきである。上司が起訴され、公判で証人として出廷することになった際も、スタンスは変えるべきではない。
問題は、会社ぐるみの組織的犯罪の場合だ。上司が身柄を拘束され、会社から「よけいなことはしゃべるな!」と強要される可能性は十分に考えられる。
参考人として呼ばれたら、警察側は部下を疑いの目をもって取り調べると考えたほうがいい。上司をかばって虚偽の供述を行えば、法的な罰がないとはいえ、自分も共犯を疑われる可能性が高くなる。
公判へ進んだ場合は、証人は被告側から依頼されるケースが多い。ここでも被告人である上司やその弁護人から、彼らにとって有利な証言を行うよう求められることもあるだろう。しかし、たとえ上司に恩があったとしても、断固として虚偽の証言は拒否すべきだ。被告人はいくら嘘を言っても罪とはならないが、証人の場合、先に述べた通り偽証罪に問われることになるのだ。
もし、事件が公になる前に上司の不正を知ってしまったら、真っ先に内部通報すべきである。06年4月から「公益通報者保護法」が施行され、正当な理由を持つ通報者は法的に守られることになった。図2に示したように、企業の内部通報窓口や行政機関などに相談する方法がある。
仮に、上司に違法行為を命令されても、絶対に拒否しなければならない。立場上、断ることが難しければ、速やかに内部通報しよう。