「生理不順」を治療する恐ろしい方法

幸い、床屋のナイフは不規則な生理を治療する最後の手段にとどまっていた(近世以前、西洋では床屋は安価な外科医として活動し、簡単な手術を行うこともあった)。しかしヒポクラテスは、若い女性の血管から瀉血させることについて、思い悩むことはなかったようだ。彼にとって、血液は所詮血液に過ぎなかったからだ。

これがうまくいかない場合、次に選ばれた治療法は、子宮をかき回して活性化することだった。なんと恐ろしい! ヒポクラテスの治療法では、甲虫の死骸、特に有毒な化学物質を分泌するツチハンミョウを膣のなかに詰め込むことを勧めている。この分泌物(カンタリジン)は、血管を膨張させ、血流の増加を促すとされるからだ。スパニッシュ・フライとしても知られるツチハンミョウは、歴史上最も悪名高い毒薬あるいは催淫剤――服用量による――という名誉を担っている。2つの可能性があるというのは、ベッドタイムの賭け事としてはリスクが大きすぎると思うが。

昔の医者は、この言語道断な処置の必要性を信じていた。そうしないと水分を失って干からびた子宮が、うるおいに満ちた臓器に取りつこうとして体内をさまよいはじめると考えられていたからだ。

ギリシアの外科医アレタイオス(2世紀頃)も、子宮は、人間の体内に独立して存在する動物のようなものだと考えていたようだ。幸い彼は、子宮は強い香りに反応するため、患者が強烈な臭いの調合薬を飲むことで、またはよい香りの膣ペッサリーを使って、子宮を元の位置に戻すことができるとしている。つまりタイミングよく与えたソーセージで、リス狩り中の犬の気をそらすようなものだ。

ヒステリーという言葉は「子宮」が由来

こうした治療法は、女性の生殖能力を完全に回復させることを目的としていた。子どもを産むことは結局のところ、重要な宗教的・社会的な責務だったからだ。同時に外科医が恐れていたのは、治療を受けなかったすべての女性の心臓付近に人を狂わせる経血がたまることだった。これは発熱、発作、気鬱、そして――恐ろしいことに!――たとえば悪態をつく、怒る、大声で意見を述べるなどの、過度に男性的な行動を引き起こすと信じられたからだ。

1600年までに、こうした現象はヒステリー性疾患として知られるようになり、その後(ギリシア語で「子宮」を意味するhysteraから)ヒステリー(hysteria)として定着した。ただしこのいきさつはけっして明快ではない。

当初は子宮の不調とされていたものが、1600年代になると、男性も罹患りかんする神経性の病気とする理解が広まっていたからだ(不調の原因を器質的なものとする学派と心因的なものとする学派の間で、19世紀から20世紀初頭にかけて激しい論争が起きた。ジグムント・フロイトも何度も考えを変えたあげく、最終的には男性もヒステリー患者になると結論づけている。それにもかかわらず、「ヒステリー」という言葉はいまだに非常にジェンダー的な色合いが濃く、興奮を露わにしていると判断された女性に対して使用される場合が多い。ただし奇妙なことに、とても陽気な人間に対する褒め言葉としても使われる。この謎めいた言葉には、さまざまなニュアンスが含まれているのだ)。