「経血=危険」という誤解は広まり続けた

ギリシア・ローマ時代以来のこうした思考はその後もまるで貝のようにしつこく存続し、中世になると、男はホルモンの影響下にある女に見つめられただけで呪われるとか、また経血は、単に女の子宮内の血液というだけでなく、敏感なペニスの皮膚を焼くと、広く信じられるようになった。

中世の男が勇敢にも、あるいは好色にも、生理中の女性を妊娠させた場合、男の情熱によって女は力を得る一方で、男のほうは、女の冷たさと湿り気で力を失い、また生まれた赤ん坊は弱々しく奇形で赤毛(赤毛のみなさんには申し訳ない……)になるといわれた。

さらに、女の危険は年齢を重ねれば収まるわけではなかった。閉経前後の女は、それまでに排出しきらなかった危険な経血を体内にため込んでおり、目や鼻から噴き出た有毒なガスが周囲の赤ん坊や動物を病気にする、あるいは殺害する可能性があるとされたのだ。

古代の医学者たちが考えた生理痛の治療法

もちろん、過去の多くの女性がつらい生理痛に苦しんだに違いない。中世の女子修道院長ヒルデガルド・フォン・ビンゲンは生理痛について、アダムに禁断の果実を食べるように勧めたエバに下された罰だと説明している。

僕がこのことを特に記しているのは、中世の一部の尼僧は極端な絶食や瀉血を通じて生理を止めることに成功しており、これは彼女らの賞賛すべき聖性をよみした神が、代々女性たちに与えられた罰から彼女たちを解放した印と解釈されたからだ。現在では、このいわゆる「奇跡の拒食」、つまり極端な貧血の結果、先に述べた冬の栄養不足に苦しんだ18世紀のエディンバラの女性たちと同じことが、彼女たちの体内で起こっていたのだとわかっている。

こうした脅かしは別として、古代の医学者たちは、規則的な月経周期は女性の健康にとって非常に重要だと述べていた。したがって多くの女性たちが何より優先すべきこと、それは不規則な生殖サイクルを軌道に乗せることだった。

医学の手引き書には、生理痛に悩む既婚女性は、定期的にセックスして健康な食事をとるべきだと書かれているが、これは優れたアドバイスだと僕も思う。その効果がなかった場合の穏やかな治療法のなかには、薬草や葡萄酒を含む薬、すりつぶした果物や野菜でつくった膣ペッサリーなどがあった。

ベッドで寝ているカップルの足
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