「サウナ後は寝つきがいい」には医学的根拠があった

つまり、前半部の3時間では、レム睡眠とノンレム睡眠が2サイクル現れるわけですが、このタイミングで現れる2回のノンレム睡眠が、最も深く眠っているタイミングということになります。

この前半部の深い眠りのとき、私たちの体の中に「成長ホルモン」が分泌されます。

成長ホルモンはその名のとおり、赤ちゃんから大人になるまでは、人間の脳の発達や体格の成長を促すために働きますが、実は、成人したあとは、日中に受けたさまざまなストレスによって、心身が負ったダメージを睡眠中にメンテナンスする役割を果たすようになります。

この成長ホルモンはほぼ睡眠中にしか分泌されないホルモンで、最も多く分泌されるのは入眠後の3時間のタイミングなのです。

つまり、この入眠後の3時間に、心身のダメージを修復してくれる成長ホルモンが分泌される深いノンレム睡眠がしっかり現れることこそが、質の高い睡眠といえます。

そしてサウナには、この質の高い睡眠に私たちを誘ってくれる効果があります。その理由は、サウナが自律神経と体温の変化に影響をおよぼすためです。

睡眠の質を高めるためには「外気浴」が大切

血液の流れをコントロールする自律神経には、「日内変動」と呼ばれる1日の変動サイクルがあります。図表2のとおり、朝と夕方の1日2回、交感神経と副交感神経のバランスが大きく切り替わります。

朝は副交感神経から交感神経へと優位が変わることで活動しやすくなり、夕方は交感神経から副交感神経へと優位が変わることで、夜ぐっすり眠る準備をします。

実は、この夕方のタイミングにサウナに入ると、交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズになり、成長ホルモンがしっかり分泌された深い眠りを得やすくなるのです。

日中は、交感神経が優位になることで毛細血管を収縮させ、血液を体の中心部である臓器や脳に多く集めます。

このとき、「深部体温」と呼ばれる体の中心部の体温が上昇して、体は活動しやすくなり、脳では思考のめぐりがよくなります。

夜間は、副交感神経が優位になることで毛細血管を拡張させ、血液を皮膚に近い末梢の血管に多く集め、外気によってその血液を冷ますことで熱を放散して体温を下げます。

このときは、「皮膚体温」と呼ばれる体の表面の体温は上昇しますが、その熱は放散され、体の中心部は血液が少なくなるため深部体温は低下します。

私たちの体は、深部体温が低下すると休息モードとなり、眠気を覚えるようになります。

つまり、副交感神経を優位にすることで毛細血管を拡張させ、深部体温を低下させれば、夕方から夜に向けて眠気が増して入眠しやすくなり、睡眠の質は高くなるわけです。