できないところを比べても意味がない

大人はよく子どもに「将来の夢」について聞きますよね。

今だったら人気は、ゲーム・プログラマーやゲーマー、漫画家、ユーチューバーでしょう。子どもに「好きなことを見つけなさい」「夢を見つけなさい」と言う一方で、好きなことをしているのにダメ出し、否定するのは矛盾しています。「なりたいものになりなさい」と言いながら実は、「一流企業に入ってほしい」「安定した職業についてほしい」と思っているわけです。

「でも、好きなことを職業にして生活できるのは、ほんの一部の人だけだから」。そう言う親御さんは、自分の子には特別な才能がある、と思えない人たちです。子どもを伸ばす親に共通するのは、「自分の子には引き出されるべき才能がある」と信じる力です。

壁に街のスケッチを描く小さな子供
写真=iStock.com/Dave_Pot
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たとえ口に出さなくてもそう信じていて、そういう人はけっして「うちの子できないんです」とは言わないものです。「なぜそんなことを信じられるの?」と思う人もいるかもしれませんが、「できない」というのは、他の子と比べるから出る言葉です。

自分の子どものいいところを見つけようとしないで、ダメなところばかり探してしまうのは、

(1)人と比べてできないところが気になる。
(2)突出しているより満遍なく平均以上でいてほしい。
(3)我が子にできないところがあるとダメな親と思われそう。

という極めて他人軸な発想と言えるでしょう。

「満遍なく平均以上」では子どもは伸びない

たとえば学力テストというのは、本来の目的はたったの2つのはずです。

(1)その子の個性や得意を見出して、伸ばしてあげるため。
(2)今どのくらい理解しているか到達度を見て、さらに伸ばしてあげるため。

減点方式で、「○○くんは、数学が平均点に満たないのでダメね。個別学習コースを取って成績を上げて追いつかなきゃ」と、常にマイナスの埋め合わせに追われるのでは、本末転倒です。

娘のすみれは、18年間塾なし、小中高は公立だったため、かかった教育費はたった50万円でした。その分、好きなバイオリンに打ち込み、得意を伸ばすことができたのです。「教育費がかかる」とよく言われますが、それは、満遍なく平均以上でいてほしいと思うから。

人と比較し、足りない部分を埋めようとすれば、時間もコストも積み上がっていきます。自分の子どもを自分の基準で信じられる人は、発想が自分軸です。他の子と比べたり、世間の目を気にしなければ、10問の中の5問できただけでも、「ええっ、5問しかできなかったの?」ではなく、「5個もできたの? すごい!」とほめられます。

親が自分軸を持って100%ほめる積み重ねが、子どもを伸ばす環境となるのです。