なぜこのようなことをするのか。自分の仕事を緊急度と重要度の4つの領域で考えてみよう。緊急で重要なこと。緊急で重要ではないこと。緊急ではないが、重要なこと。緊急ではなく重要でもないこと。

この中で、もっとも力を入れるべきは「緊急ではないが、重要なこと」だ。

例えば、店舗でのクレーム対応について考えてみたい。お客さまからのクレームに即座に対応することは、当たり前のことだからだ。しかし、将来の見通しをもたないまま、緊急で重要な事柄にばかり追われていると、目の前の問題に振り回されるだけで疲れ果ててしまう。その結果、緊急ではなく重要でもないことに逃げ込むようになり、「緊急ではないが、重要なこと」にほとんど目を向けなくなる。何事にも受け身になり、自分の将来にも今の仕事にも無責任になって、やがては他人や組織に依存するようになるだろう。

そのようにならないためには、緊急ではないが、重要な事柄に目を向けるべきである。クレームを減らすには、従業員とのコミュニケーションを密にして、やる気を引き出しておくというのが一番だ。従業員がしっかり働いてくれれば、クレームも自然に減る。緊急で重要なことが減れば、さらに仕事のスキルを磨く時間が増えるという、いい循環に自分や自分の組織を導くことができるのだ。

私はこれまで『7つの習慣』を雑誌などで推薦したことはない。「論語」や「聖書」などは、手元に置き、いつも読み返してきたが、本書は違う。「座右の書」というより「親友」のような感覚だ。私が考えているのとまったく同じことを、違う言い方で表現してくれているのだ。人間にとっての幸せとは何か、人は何のために生れてきたのか。そのすべてに共感できる。亡くなられたコヴィー博士とは生前にお会いすることはできなかったけれど、「地球上で一番博士のことを理解しているのは私だ」と言えるぐらい親近感を持っている。

※すべて雑誌掲載当時

(石井綾子=構成 若杉憲司、的野弘路=撮影)
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