クラム・チャウダーの話は、ワタミの外食部門の社員研修で何度も話してきた。『7つの習慣』を研修に使い始め、今では新入社員研修の課題本として活用している。

あるべき人格を身につけて、人は初めて成功できる。人格を磨かず最初から成功だけを目標にすると、表面だけの成功になってしまう。『7つの習慣』は、人格を磨くために必要な心構えと、そこから得た行動を説いている非常に奥深い本。だからこそ、ここに書かれている習慣を社員に身につけてもらいたいのだ。

この本の大きな魅力は、習慣について述べているだけではなく、具体的なエピソードを通して我々読者に訴え掛けてくるところなのだろう。私が一番好きなエピソードは、「ラ・マンチャの男」というミュージカルを題材にしたものだ。

「ラ・マンチャの男」の劇中劇には、ある中世の騎士がひとりの娼婦と出会う場面がある。ヒロインの娼婦は、娼婦であるというだけで周囲の人々から見下されている。しかし、主人公の騎士だけは、彼女の中に美しく気高い姿を見出し、彼女を肯定し、繰り返しそのことを訴え掛けた。

最初は、騎士の言うことを信じようとしなかった彼女だが、騎士の忍耐強い無条件の愛に刺激され、次第に彼女は本来持っている美しさや気高さを信じるようになる、というお話だ。

ゲーテは「現在の姿を見て接すれば、人は現在のままだろう。人のあるべき姿を見て接すれば、あるべき姿に成長していくだろう」と言っている。つまり、本来は目には見えないその人の可能性を信じて相手を高く評価すれば、相手もそれに呼応して自分の可能性を信じて生きられるようになる、ということだ。

これは部下と上司との関係についてもいえる。この部下は仕事のできない駄目な奴だという態度で上司が接すれば、部下も自分は駄目な奴だと思い込んでしまう。逆に、部下の良いところを見つけて、その可能性を信じて相手と向き合えば、部下は自信を持ち、仕事もできるようになる。自分の思いが相手をつくっていくのだ。

ワタミの社員には、手帳に5年先までの夢・目標をつけるよう話している。これは何かというと、「緊急ではないが、重要な事柄」を行うための手帳である。緊急ではないけれども重要なやるべき事を週単位、月単位、年単位でそれぞれ書き出していき計画化して、自分のやるべきことを明確にしていく。