「日本人と結婚しているのに日本語できないの?」
行政側も外国人の存在を無視しているわけではない。行政の職員や外国人支援をしたいという日本人から「外国人の人たちがどんなことで悩んでいるか教えてほしい。どんな支援をすれば喜ぶのかも知りたい」という相談が来ることもある。
外国人住民の増加に合わせ、行政は、無料日本語教室、多言語での就職相談、多言語での案内表示、市役所での通訳、また、同じ地域に住む外国人の出身国を知ってもらおうと、彼ら、彼女らの国の食べ物や文化を紹介したりと、お互いにより住みやすくなるよう努力している。
そうした支援で助かっている外国人住民も多いのだろうが、まだまだ情報が行き届いておらず、日本で苦労しながら生活している外国人も少なくない。また、多くの日本人、行政側も、外国人が日本でどういう生活をして、どういうことで困っているかを知らない。
日本語が苦手なフィリピン人の友人たちに頼まれて通訳をしようとすると「ご本人様、日本語できないんですか?」と聞かれることもある。
僕も妻が外国人で日本語での会話が得意でないこと、読み書きが出来ないことを伝えると、「日本人と結婚していても日本語できないんだ」と驚かれることもある。
「日本に住んでいるなら、問題なく日本語は話せるし、読み書きも問題なくできるよね」という認識の人も少なくない。
ミカは、買い物や母との会話などで日常的に使う言葉は話せるが、踏み込んだ話になるとわからないことが多い。漢字を使用した読み書きも、勉強をしたことがないからできない。長く住んでいるだけで日本語ができるようになるわけではない。
「外人は自分で頑張るしかない」のか
困っている外国人に支援が行き届いていないのは、行政だけの責任ではない。
外国人として日本に住むミカはこう言う。
「わからないこと沢山あるけどしょうがないよ。だって私は外人でしょ。日本は自分の国じゃないでしょ。だから私みたいな外人は自分で頑張るしかない。自分で選んで日本に来たんだから」
日本に来たのも、日本で子供を育てるのも自分で選んだ道。だから日本の生活で困っても、国や行政に何かをお願いするのではなく、自分で頑張らなければいけないという。ミカ以外のフィリピン人たちからも「外人は自分で頑張るしかない」と同じような言葉を聞く。
もちろん自分の力で日本語を学び、難しい敬語も使え、漢字でメールのやり取りができる人もいる。日本でビジネスを始めて成功する人もいる。一方、自分の力だけで頑張れない人もいる。特に外国人は、日本語だけでなく、日本の習慣や仕組みの理解、在留資格など日本人よりもクリアしなければいけない問題が多い。そんな時に助けを求める先が、同国人の友人や先輩だけでなく、行政の窓口も選択肢の一つとして出てくるようにならなければいけない。
日本には今、約296万人(2022年6月末現在、出入国在留管理庁HP)の外国籍の人が住んでいる。日本に外国人が増えだしたのは、昨日今日始まったことではない。何十年も前から、外国人との共生は課題として挙げられている。