デンマークの教育改革から約30年。成果は着実に出ている。デンマークの人口は約586万人で、横浜市と川崎市を足したくらいの小国だ。しかし、7社のユニコーンを生み出している。ゲームなど3Dコンテンツ開発のプラットフォームで世界を席巻しているユニティ・テクノロジーズもデンマークの企業だ。一方で、日本はデンマークの20倍以上の人口を有しているにもかかわらず、ユニコーンは6社しかない。これでは日本は出る幕なしだ。

北欧諸国は小国だから制度改革がやりやすかったという見方もあるが、実はそれは正しい。世界は国民国家の時代から、人口500万~1500万人程度のメガリージョン(大都市とその周辺都市で構成される新しい経済活動単位)の時代になった。デンマークは、まさにコペンハーゲンを中心としたメガリージョンだ。デンマークよりユニコーンを多く輩出しているスウェーデンも、人口は約1045万人であり、東京都と神奈川県の中間程度の規模のメガリージョンである。

次々とユニコーンを生み出すアメリカはどうなのか。いっけん国家として繁栄しているように見えるが、ユニコーンの所在地は西海岸とニューヨーク、ワシントンDC間に集中していて、その他はむしろ経済が停滞している。アメリカは国家ではなく、メガリージョンが繫栄しているだけだ。

間もなくGDPで日本を抜くインドはユニコーンが64社と急増しているが、地域的にはかなり偏っている。バンガロール、プネー、ハイデラバードの3カ所。あとはニューデリーとグジャラートに少しある程度で、ほとんどの地域は今も貧困にあえいでいる。かつてインドの工業を引っ張っていたコルカタ(ベンガル)も、過去の栄光からは程遠い停滞ぶりだ。

インドは国内格差が大きい。しかし、だからといって均衡的な発展を目指すことはない。やる気のあるメガリージョンに自由にさせて、その足し算で国を強くしていく戦略であり、事実、それで成功している。

小国でない限り、もはや国民国家としての繁栄は難しい。それは日本も同じだ。日本政府に任せていても、時代錯誤の政策しか出てこない。地域が切磋琢磨し、成長し、全体を牽引するほかには、衰退トレンドを反転させる道がないことを肝に銘じるべきだ。

今求められているのは答えのない問題を解く力

問題は、地方にメガリージョンを成長させる知恵がないことだ。

23年4月の統一地方選で、無所属の新人、高島崚輔氏が史上最年少の26歳で兵庫県の芦屋市長に当選した。若い世代の台頭は喜ばしいことである。

ただ、期待の半面、不安もある。高島市長は灘高で生徒会長、東大中退、ハーバード卒という絵に描いたようなエリートだが、まさに答えのある教育で結果を出してきた人物だ。答えのない地方の問題に対して、答えを見つけられるのか。現時点では未知数だ。

今回の統一地方選では、日本維新の会が躍進した。かつては(メガリージョンの母体となる)道州制の実現を政策の中心に掲げていたが、大阪都構想でつまずいてから後退してしまった。