「おじさんLINE」問題

ただ、このあたりは業界や年代によって、感覚が大きく異なります。相手が「あれ?」と思う使い方をしてきたからといって、いちいち「失礼だなあ」と腹を立てるのは不毛。それこそ自分の基準で人を断罪する失礼な行為です。「この人はこう使うんだな」とゆるく受け止めましょう。LINEを平和に使う上でもっとも大切なのは、寛容の精神です。

さっきの「最初に挨拶~」にも関係する「既読スルー」の問題も、送った側が神経質になり過ぎるほうが失礼。相手が読んですぐに返信できる状況とは限りません。しばらくたっても反応がないからといって「おーい、返事まだ」などと催促すると、間違いなく相手をムッとさせます。全力でこらえましょう。

いっぽうで、日程のすり合わせなどの連絡を長く放置しておくのは、失礼であり迷惑。こっちの都合がわからないと相手が困ります。

LINEがらみの失礼を考える上で外せないのが、数年前から話題の「おじさんLINE」の問題。おじさんが若い女性に送るLINEには、なぜか共通点があり、それが失笑(憎悪?)の対象になっています。たとえば、こんな調子。

〈おはよう☀ ゆうこチャンは、もう起きたカナ? おじさんは今日も仕事です(ノД`)シクシク…

寒いから、ゆうこチャンとしっぽり♨にでも行きたいナ♥ ナンチャッテ(^^;じゃあね~(^o^)/〉

若い女性のあいだでは、同性の友達とこの手の文面をやり取りして笑い合う「おじさんLINEごっこ」という遊びがあるとか。

路上でスマホに入力している中年男性
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです

「笑いものにするなんて失礼だ!」と、身に覚えのある方はご立腹なさっているかもしれません。それはあまりにも図々しい憤り。失礼なのは、親しくもない相手に馴れ馴れしいLINEを送る側です。

石原壮一郎『失礼な一言』(新潮新書)
石原壮一郎『失礼な一言』(新潮新書)

「おじさんLINE」が批判されるのは、そこに不愉快な失礼が凝縮しているから。読みづらいだけの絵文字や顔文字の多用&不自然なカタカナの混ざり具合、返事のしようがない一方通行の言いっ放し、距離感を無視した下心の押し出しっぷりなど、あまりにも自分本位。たぶん「若い女性にLINEを送る」という時点で、すっかり舞い上がって、タガが外れてしまうのでしょう。恐ろしいことです。

うっかりやらかさないように肝に銘じるのはもちろん、どういう相手にどんなLINEを送るにせよ、相手を不快にさせない配慮は欠かせません。「おじさんLINE」を反面教師にさせてもらいましょう。