国が解散命令請求を出すかどうか注目が集まっている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。かつて旧統一教会信者だったジャーナリストの多田文明さんは「旧統一教会の分派と見られる団体が東京・府中に教会を建設中(現在中断)であることがわかりました」という。新たな布教・勧誘の拠点となるのか、建設予定地周辺の住民や大学を取材すると――。

旧統一教会の分派「霊連世協会」が教会を建設

東京都府中市に「霊連世協会」なる団体が教会を建設しています。現在は、コンクリートの基礎部分で工事が中断していますが、同協会は旧統一教会の分派とみられており、周辺住民の不安は大きくなっています。

「霊連世協会」なる団体の教会建設現場の張り紙
筆者撮影
「霊連世協会」なる団体の教会建設現場の張り紙

そこで教会の近くにある、霊連世協会のホーム(泊まり込み施設)に出向き、信者と思われる女性に教会建設に関して聞くと次のような返答だった。

「住民が(教会建設に)反対している? 聞いたことがないですね」

本当に住民の反対を知らないのか。それとも素知らぬフリをしているのかはわかりませんが、住民らの不安がまったく信者には伝わっていないことがわかります。

「霊連世協会」は、旧統一教会の文鮮明教祖が2009年に「文教祖夫妻(真の父母)のもと、霊肉界(霊界と地上世界)を自由に交流して、通じ合いながら暮らすことのできる『霊連世協会』時代が宣布された」と話したことが由来になって、そのまま団体の名称になったようです。

府中労働組合総連合からの公開質問状の回答のなかで、霊連世協会の会長は、文鮮明教祖の教えの根本に戻ろうと教団の改革を訴えたが10年前に「旧統一教会から異端者として除名された」と答えています。そして当団体、信徒らは「旧統一教会とは一切関わりがない」としています。

しかしながら、前述の女性信者は筆者の直撃取材に対して「原理講論と文鮮明教祖のみ言葉に忠実に従って信仰をしていく」とも話しており、旧統一教会の教えをしっかりと継承している団体であることは間違いありません。

教会の建設においても、過去に旧統一教会で使われた「正体隠し」の手法がしっかりと受け継がれています。

住民らの話によると、2022年夏に建築が始まった当初、現場の看板には「霊連世協会」とあったそうですが、しばらくしてその上に「RSS教会」という紙かシールが貼られたそうです。

「霊連世協会」と記すと、旧統一教会の流れをくむ団体であることがわかる恐れのあることから、その名を隠し、「霊(R)連(R)世(S)協会」の頭文字をとったものと考えられます。この行為は、過去に旧統一教会が教団名(正体)を隠して人々に近づき、こっそり教義を教え込んで信者にしていき、霊感商法などの被害を多く生み出した「手口」に共通するものです。

前述したように教会の建設工事は現在中断しています。ストップしたのは、2022年7月、安倍晋三元首相の銃撃事件が起こった頃で、その後はコンクリートの基礎部分のみが放置された状態になっています。

取材を進めると、工事を始めた業者も、最初は「教会」としか聞かされておらず「一般の教会の建設だと思っていた」ということです。後に、ここが旧統一教会の流れを組む分派団体であることを知って、とても驚いたといいます。「もし知っていれば、工事はしないはず」との話もあり、工事が行われずにいる理由もここにあるようです。

今は工事をいったん取りやめている形ですが、今後、同協会が教団の分派であると正体を明かさずに別会社に依頼して、新たに建設を進めることも考えられます。実際、近くにある同協会のホームを集会所にしようしているとの情報もあり、住民の不安は高まっています。