※本稿は、中島恵『中国人が日本を買う理由』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
中国人にとって「安、安、安」な留学先
日本に留学している全留学生約24万2000人のうち、ほぼ半数は中国人で、およそ11万4000人(2021年、日本学生支援機構のデータ)に達する。コロナの影響で減少した時期を除くと、日本留学を希望する中国人は過去30年間、増え続けている。
中国で、かつてエリート層の特権だった海外留学は、その後、留学を隠れ蓑にした出稼ぎ、国内の熾烈な受験競争の回避などを目的とするようになったが、経済発展もあって、近年、その目的は多様化、留学生を送り出す家庭も中間層にまで広がっている。
米中対立やコロナの影響もあり、彼らにとって最も身近で、学費が安く、安心・安全、つまり「安、安、安」な留学先が日本となった。
その需要に応えるため、十数年前から東京・新大久保や高田馬場駅周辺に増えてきたのが大学進学希望者を対象とする受験予備校だ。
中国人が日本に留学する際、一般的にまず日本語学校に入学するが、そこで学んだだけでは大学受験対策には不十分。その結果、増えたのが予備校なのだ。
8割はアルバイトをする必要がない裕福な学生
高田馬場駅付近には在日中国人の間で有名な予備校が10校以上あり、経営者のほとんどが在日中国人だ。留学生にとって、中国人の専任講師や現役の大学院生(アルバイト)などから中国語で直接指導してもらえるメリットがある。
昨今、中国人の苦学生は少なくなり、コンビニなどでアルバイトするのはベトナム人、ネパール人などが増えた。
都内で働く30代の中国人女性は「実感として、私が来日した10年前は8割の中国人留学生がアルバイトしていましたが、今は8割がしていません。隔世の感があります」と話していた。
中には親が買ってくれた高級マンションに住み、一日中、家でゲームをしたり、インフルエンサー(中国語で網紅)として、中国に日本情報などを流しながら、経済的に余裕のある優雅な留学ライフを送っている学生も多い。