アメリカ留学に比べて「お得感がある」
早稲田は、他大学と比べて英語で受験可能な学部が多いのが特徴だ。また、もともと英語で授業を行う国際教養学部を含め、全13学部のうち、政治経済、創造理工、基幹理工、文化構想、社会科学の6学部に英語で授業を行うコースが併設されている。
江氏は「日本語受験はコロナの影響を受けましたが、我が校には英語受験ができる強みがある。欧米に行く予定だった優秀な学生が早稲田にシフトしてきています。彼らはアメリカのアイビー・リーグ(アメリカ東海岸の名門私立8大学)に入れるくらいの実力がありますが、米中対立の関係で、以前より日本を選択するようになったのです」と話す。
英語コースがあれば、中国をはじめ、世界各国から留学生を受け入れる間口が広がる。
早稲田の文系で最も学費が高いのは国際教養学部で年間約160万円だが、他学部の英語コースは普通コースと学費はあまり変わらない。
そのことから、「お得感があると思います。アメリカの大学の学費は少なくとも3~4万ドルで生活費も高いですが、日本は学費も生活費も格安。しかも治安もよく、距離的に中国に近いことも学生や保護者にとって魅力的な要素です」(江氏)
競争率が10分の1以下の日本で付加価値を上げる
国際課の関係者もこう話す。
「競争が激しい中国では、アメリカ留学だけでは差別化しにくいので、そこにプラスして日本にも留学するというのは、学生にとって大きなアドバンテージになります。また、一般論として、同じくらいの学力であれば、母数が多くて競争率が高い中国よりも、日本など海外に行ったほうが、ワンランク上の大学に進学できる可能性が高い、と考える学生もいます」
ある学生は、高校の成績が北京市内の上位校の一角である北京師範大学(日本でいえば筑波大、東京学芸大などに近いイメージ)に届かないくらいだったが、英語受験によって、実力よりも偏差値が上の早稲田に合格できたそうだ。
考えてみれば当たり前の話だが、人口が中国の10分の1以下の日本のほうが中国より競争率は低い。レベルの高い大学で、自分の付加価値を少しでも上げたいと望む中国人にとって、幼い頃から学んできた英語で受験できるいい学校が日本に増えれば、そちらを選ぶケースも増えていくだろう。
中国人の高校生を日本に留学させようと奮闘している人がいる。上海や深圳などで学校経営をしている信男国際教育グループ理事長の魯林氏だ。
魯氏は日本式の教育に感銘を受け、中国に「信男教育学園」を創立した。独自に学校を作るわけではなく、上海文来高校、深圳第三高校、長沙市明達高校など既存の高校に「中日班」という特別クラスを設置している。