日本の教育は小、中、高校が「とくにすばらしい」

学生は「中日班」で日本の高校のカリキュラムを2年間学び、日本の高校2年の2学期(9月)に、日本各地にある32校の提携校に編入するという仕組みだ。通常なら中国の高校を3年間で卒業し、日本の大学に留学する「3+0」が、魯氏は中国で2年、日本で1年半勉強する、自身が考えた「2+1.5」にこだわる。そこには、ある思いがある。

「私は日本の小、中、高校、つまり大学以前の教育がとくにすばらしいと思っています。私自身も九州大学で学んだ留学経験者ですが、日本人の挨拶、掃除、整理整頓、クラブ活動、給食当番、時間を守ることなど、規律正しい生活を中国の若者たちに学んでほしいと思ってきました。成人前に日本の教育を受ければ、より日本文化や社会を理解しやすくなると思うからです。

大学からの留学だと半分大人になっています。集団行動が減り、日本人との交流も限られ、学問以外、『日本社会』について学ぶ機会は少なくなる。大学生は誰にも干渉されませんから、個人の考え方によって生活はかなり変わってしまいます。

高校の途中からでも日本式教育を受ければかなり違う。自立した人間を育てられるし、日本人から受ける刺激も多くなる。担任の先生もいます。そう考えて、このような仕組みを考えました」

中国では家も車も親が世話してくれるが…

これまでにのべ1000人以上の学生が日本の高校に編入した。そのほとんどが指定校推薦を受けて、日本の大学に合格している。魯氏はいう。

「日本人と集団生活を送り、クラブ活動を行ったりすることで、自然と礼儀正しくなると思います。ある保護者は、子どもが中国に戻ってきたとき、自分から祖父母へ挨拶に行ったり、家事を手伝ったりしてくれて、親の苦労もわかるようになったと喜んでいました。

中国では成績はまあまあだったが、日本で人間的にも、学力面でも成長し、筑波大学に合格した学生もいます。私が最も感じるのは、1年でも早く若いうちに日本を経験することで、自立した人間になることです。自分のことは何でもできるようになります」

中島恵『中国人が日本を買う理由』(日経プレミアシリーズ)
中島恵『中国人が日本を買う理由』(日経プレミアシリーズ)

「日本に来たから自立できた」という話は複数の中国人から耳にした。東北地方の高校を卒業後、来日して10年になる30代の中国人はこう語る。

「ずっと中国に住んでいたら、親が家も車も買ってくれただろうし、世話もしてくれる。いい面もありますが、困難に直面したとき、自分で解決できない人間になってしまったかもしれません。

日本にいても中国の親を頼る人はいますが、せっかく留学したので、自分のことは自分でやろうと思い、病気で入院したときも、心配をかけるので親には連絡せず、退院するときもひとりでした。心細かったですけど、自信がつき、自分で何でもできるようになりました」

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