「文章化」が苦手な学生にとっては福音

つまり、ChatGPTを使って合格点を取れるレポートを作成するには、学生は事前にケースドキュメントを熟読し、どのようなレポートを書くかを明確にイメージしておく必要がある。現時点では、1回の質問でチャットGPTから合格水準のレポートを得るのは困難だが、適切な追加質問を投げかけていけばレポートの質は向上していく。とはいえ、ケースドキュメントの内容や求められている回答の要点を正確に理解していなければ、学生はこのプロセスを完全にコントロールすることはできない。

テキスト読み上げを行っているAIのイメージ
写真=iStock.com/Ole_CNX
※写真はイメージです

そんなことなら、ChatGPTなどは使わずに、直接自分で文章を書くほうが早いと感じる学生も少なくないだろう。しかし、何を回答すべきかの構想は頭のなかに浮かぶものの、それを文章化することは苦手というタイプの学生もいるかもしれない。こうした人々にとっては、ChatGPTは大いなる福音となるだろう。

MBAの授業は、高いレベルの読解力やデータの分析力、そして論理の構築力などを求められる。これらの能力は高いものの文章力が劣る学生たちは、チャットGPTによるサポートをうまく活用してもらえばよい。一から文章を書かせるのではなく、ざっと書いた文章の添削にチャットGPTを利用するという使い方もある。こうしたやり方でチャットGPTを使う学生は、頭を使わなくなるわけではなく、頭の使い方が変わるだけである。

引用の扱いには注意が必要

ChatGPTをMBAなどの学生が利用する際に気をつけなければならないのは、回答が依拠する引用元が曖昧にしか示されないことである。信頼できる資料に基づく回答かどうかを確認するには大変な手間がかかるし、場合によっては引用の範囲を超えた「剽窃ひょうせつ」が生じている可能性すらある

このような欠点はGoogle検索などにはないものであり、ChatGPTに特有の問題である。特に、学内外で長期間にわたり保存され、事後の検証にさらされ続けるMBAの修士論文や博士論文などに関しては、より慎重にチャットGPTを利用する必要がありそうだ。