都内の公立小学校PTAで、役員と会長が対立し、次期会長不在のまま新学期を迎えるという前代未聞の事態が起きた。何が原因だったのか。ライターの大塚玲子さんがリポートする――。
背中合わせに立つ男女のシルエット
写真=iStock.com/kieferpix
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3世代前から代々住んでいる住民の発言力が絶大

春うららの年度初め、母親たちに緊張をもたらす脇役として存在感を放ち続けるPTA。昔はよく“専業主婦vsワーママ”の対立構図で取りあげられたものですが、時代は変わりつつあります。

つい先日、「ワーママ役員vs地元民の父親会長」の反目で本部役員選出が膠着こうちゃくし、会長未決のまま新年度に突入したPTAがある、という話を友人が知らせてくれました。

舞台は東京都某区の、公立小学校PTA。都会だね、という印象の街ですが、実はこの地区は「3世代前から代々住んでます」という住民も多く、且つこの方たちの発言力が絶大なのだとか。

話を聞かせてくれたのは、この地区に6年ほど前に移り住んできた母親、光世さん(仮名)です。会社を経営しており、中学生と小学生の子どもを育てています。

「会長に直接連絡してはいけない」謎ルール

光世さんは数年前、同PTAで役員を引き受けたことがあるそう。このとき、前時代的な風習の数々に驚愕きょうがくしたといいます。

配布物はすべて紙で、「会長に連絡するときは、必ず委員長→副会長を通す」のがお約束。「地域のおえらいさん」には非常に気を遣っており、「校医である○×病院の院長にご挨拶を」「商店街会長の△□さんには、必ずお酒か甘いものを手土産に持っていく」など、土着ルールのオンパレードでした。

「周年行事など『地域のえらい人』が来るときは、席次表をつくるのも一苦労でした。『この会長は一番いい席じゃないとダメ』だとか『この人より前に必ずあの人の名前を呼ばないと大変なことになる』だとか、『あの人とあの人は絶対に席を近づけてはいけない』だとか、保護者の範疇を超えた『仕事』が山のようにあって。

私は引っ越してきたばかりだったので、知らないふりをしてばんばんアップデートを進めていたんですが、そうしたら『ちょっと変わった人がいる』ってウワサになってしまいました(苦笑)」(光世さん)