2023年度の新学期がスタートした。児童・生徒の成長には、学校・教員だけでなく、保護者の適切なケアが欠かせないが、世の中には「毒親」や「モンスターペアレント」などと揶揄される過干渉な保護者も存在する。小学校教員歴20年以上「担任」として預かった児童は累計600人以上に達する松尾英明さんが、これまでに出会った、毒親の正反対に位置する「奇跡の保護者」3人を紹介する――。
登校するわが子を見送るエプロンをつけた母親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

モンスターペアレントや毒親の対極の存在

「わが子への愛情が深く、常に守ろうとする親」

これを聞いて「いい親だ」と考える人は多いでしょう。しかしながらこの愛情深さはかえって子供の自立を妨げるケースもあります。愛情をただかければいいわけではありません。小学校教員の私は拙著『不親切教師のススメ』で、家庭教育についてそのような視点でも言及をしています。

近年、「毒親」という言葉がすっかり定着した感があります。その影響でしょうか、「自分は毒親じゃないよね?」と戦々恐々としている方もいます。この造語により、自らの子育てに対する行動が誤っていないか冷静に省みるようになったとすれば、よかったのかもしれません。多くの保護者は毒親にならないような言動を心がけていますが、そんな意識がなくても子供を自立へと導く立派な方もいます。

教員歴20年以上の私が「担任」として預かってきた児童は累計600人以上に達します。同時にその保護者とも接点を持つわけですが、心から頭が下がる方がいるのです。そんな“毒親の真逆”の存在の事例を3つ紹介しましょう。