ベテラン教員も驚いたミラクル保護者の実例3
▼事例3 学級通信上で、わが子がよく褒められている
これはトラブルではありませんが、この状況において親はどう反応するでしょうか。
B 「いつも褒めていただきありがとうございます」とお礼の気持ちを伝える
C もっと褒めてほしいとお願いする
これは、普通に考えると、うれしいことです。ただ皆さん、仕事や家事などで忙しいので、Aが最も多く、Bはまれです。しかし、今回の事例は少し事情が違います。
これは私が教員としての経験年数の浅い、20代の頃の話です。子供のタイプは快活で、素直で真っすぐ、ストイックな努力家タイプです。褒めるところはたくさんあります。
こちらの親御さんからは、次のように言われました。
「先生。うちの子供をたくさん褒めてくださるのはうれしいです。ありがとうございます。ただ、できれば今度、まだ学級通信で褒められていない子供たちの良い面も知れたらうれしいです」
聞いた私は、大変びっくりしました。まさか、他の子供の良い面も教えてほしいと言われるとは思わなかったのです。「今後、紹介していきます」と約束し、実際に行動に移したことは言うまでもありません。
この親御さんは子供の成長を大局的に見ています。わが子がよりよく育つためにも、周りも一緒に育たねばならないという教育観をもたれていたのだと思います。
想像してみてください。
わが子が褒められているというのに、わざわざ自分が「クレーマー」だと思われる可能性のあることを、他の子供のためにするでしょうか。
かなりの勇気のいる行為です。普通に考えて、言うのは相当面倒です。私は、この方が労力をかけてしてくださった指摘は間違いないことだと心服し、その後の自分の子供への見方や在り方を全面的に改めるよう努めるきっかけとなりました。
今回紹介した3人の保護者に共通している点があります。
一つ目は、どの保護者もわが子に深い愛情を抱き、まずはその痛みや苦しみをいったん受け止めてその愛情を思い切り注いでいるという点です。
二つ目は、他のお子さんに対してもわが子のように考え、真剣に対応しているところです。
三つ目は、子供の成長と自立を信じているという点です。
これらが結果的にわが子だけでなく、周りの子供、そして担任をもよりよい方向に導いています。
もちろん、今回の対応はどの学校・教員・保護者にとっての「正解」ではありません。子供は一人ひとりが個性的で全く違い、同様に保護者もそれぞれ異なる個性や背景をもった全く違う人間ですが、家庭教育と学校とはどうあるべきかというヒントにするべく、このような保護者も実在することを知っておくといいかもしれません。