「OMAKASE」と日本語でオーダーする人も

15年~19年頃の訪日旅行ブーム(爆買いブーム)などの影響で日本料理の味を覚えた人が増え、関連情報が増えたことも、「日本料理ファン」あるいは「日本ファン」を増やしている要因だ。

北京市内、大使館や日系企業などが立ち並ぶエリアで日本料理店『蔵善』を経営する小林金二氏も、数年前から中国人客の“ある変化”を感じるようになった。

「当店のすき焼きランチは98元(約1860円)ですが、ここ数年人気で、生卵をつけて食べる中国人が増えました。先日来店した6人組のお客さんは全員、刺身に卵の黄身をのせた158元(約3000円)の海鮮丼を注文したのですが、黄身はいらないといったお客さんは1人だけでした。

北京のスーパーで生食用の卵が販売されるようになったり、SNSの動画で日本の料理や食習慣を見たりした影響もあるでしょう」

小林氏は90年代から北京の日本料理店で総料理長などを務め、北京在住の日本人の間で有名な存在だが、同店の顧客の9割は中国人だという。

「最近は若年層が増えていますが、実業家や経営者が主な中高年層は、高くてもいいから、とにかくうまいものを食べさせてよ、と注文します。一人1000元~2000元(約1万9000円~約3万8000円)のおまかせコースが人気です。中国人もOMAKASE(おまかせ)と日本語でオーダーします。彼らは日本酒にも詳しくて、最近では『獺祭純米大吟醸 磨き二割三分』などを注文する人が増えています」

上海にある日本料理店
筆者の友人提供
上海にある日本料理店

北京にある二郎系ラーメン店は週末に行列が

その『蔵善』の近くに、二郎系ラーメン店『ラーメン荘 夢を語れ北京』がある。外観が日本の町中華のような店には、北京在住の中国人が多く来店し、週末には行列ができる。

二郎系ラーメンとは東京・三田にある『ラーメン二郎』の影響を受けたラーメンのことで、豚骨ベースのスープに極太の麺、大量の野菜、分厚いチャーシュー、ニンニクや豚の背脂などがのっているのが特徴だ。

中国には熊本の『味千ラーメン』や福岡の『一蘭』など日本のラーメン店が進出しており、中国人の間でラーメンは身近な存在となっている。

中国人と共同で同店を運営する小田島和久氏によると、16年にオープンした際、当初は日本人客が多かったが、次第に中国人が増えていった。

「日本人に連れられてきて、店を覚えてくれた」と小田島氏はいう。顧客は20~40代の男女が多い。

来店者の共通点は主に三つ。何らかの体験があって日本好きな人、留学や旅行で日本のラーメンを食べたことがある人、日本のアニメなどサブカルチャー好きな人たちだ。